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Wデート

一時間後ーー。 「パパ~‼」 映画が終わり、蓮が人混みを掻き分けて駆けてきた。そのまま真っ直ぐ俺の所に来るのかと思いきや、 「なんで、葵⁉」 父親を素通りし、満面の笑顔で彼の胸元に飛び込んで行った。 「れんのパパは、あおにいにと、パパ‼」 「何、蓮、俺の事、パパって呼んでくれるのか。なかなか、可愛い所あるじゃないか」 葵もまんざらでないのか顔が緩みっぱなし。蓮も頭を撫でて貰いニコニコの笑顔が溢れる。 「葵、幼稚園の保護者がいるんだ、まずいだろう」 「そうか?俺は別に構わないよ」 葵は、涼しい顔をして、蓮をひょいっと抱き上げると、出口に向かってすたすたと歩き出した。 「真生‼」遅れて涼太が合流した。 何か言いたそうに、もじもじしている。 「出るまでなら・・・」 彼が、何を言いたいのか、だいたいの検討はついている。 たった一時間でも、彼にとっては、その何倍にも感じただろうから。然り気無く手を差し出すと、にこにこしながら、その手を握り返してくれた。 「真生の手、温かい」 「涼太だって」 人混みに紛れ、何度なく、見詰め合い、指を絡ませて・・・。 年甲斐もなく、女みたいに、ドキドキした。 「そこのバカップル‼」 外に出ると、呆れた様子の葵が待っていた。 「約束だから、一時間後、ここに集合な」 「宮尾さん、本当に、真生とデートしてきていいの⁉」 恐る恐る涼太が切り出した。 「蓮は、俺がみてるから安心しろ・・・あっ‼涼太‼くれぐれも、即行で、ラブホへ駆け込むのは厳禁な」 「宮尾さん、そこまで、僕、貞操なしじゃないよ」 涼太は、苦笑いを浮かべていた。 っていうか、こういう場所では、少しは慎んで欲しい。 頼むから・・・。

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