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意外な人との再会
映画館に戻ろうと、アーケード内を歩いていると、一軒のフラワーショップが目に入った。店の前に並ぶ鉢植えには、色とりどりの可憐な花が咲いている。
「涼太、少し、見ていかないか⁉」
彼の手を引っ張ると、少し、困った表情を浮かべた。
「別にいいけど・・・」
気が向かないのか、足取りも重そうだ。
「嫌なら、いいよ。無理しなくても」
「そういう訳ではないんだ。このお店、知り合いがオーナーで・・・真生の事、その・・・恋人として、紹介してもいいかな⁉」
俯きがちに目を伏せて、隠したつもりだろうけど、耳まで真っ赤にさせて・・・。
めちゃめちゃ可愛い!
「恋人じゃなくて、夫だろう⁉」
噴き出しそうになりながら返事をすると、たちまち破顔して、逆に俺の腕を引っ張って店の中に入っていった。
「いらっしゃい・・・」
出迎えてくれたのは、涼太ぐらいの若い男性。野暮ったい黒縁のメガネをかけ、いかにも真面目そうな雰囲気をかもしだしていた。
「また新しい彼氏⁉あれ、年上とは付き合わないって言ってたのに・・・本当、涼太は懲りないね」
「五月蝿いな。過去の事は蒸し返させなくていいから‼それに、彼は、彼氏じゃなくて、僕の旦那様。今、同棲しているんだ」
涼太が体をピタリと擦り寄せてきた。
「それは良かった」
オーナーの男性が自分の事のように喜んでくれた。
「あれ、もしかして、彼に焼きもち妬いてる⁉」
「そんな訳ないだろ」
「彼は、吉沢。施設で一緒だったんだ」
涼太が、彼を紹介してくれた。
「佐田真生です。涼太のーー旦那です」
一瞬迷ったけど、今さら隠すつもりはないから堂々と答えた。
「涼太の事、お願いします」
吉沢という男性に深々と頭を下げられて、ビックリした。
「いえ、こちらこそ」
慌てて頭を下げた。
涼太は、何がおかしいのか、くすくすと笑っていた。
カゴや、花瓶に飾られた、色とりどりの花や、棚に置かれた小さな鉢植えや、サボテンを見て回る涼太。
「失礼ですけど、年は⁉」
吉沢さんに声を掛けられた。
「・・・三十五です」
正直に答えると、驚かれた。
何でだ⁉
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