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蓮の遠足

「遠足今日だろ⁉どうする⁉」 葵のその一言がなかったら、忘れたままだった。 「本当は無理させたくないけど、何日も前から、すごく楽しみにしていたし。行かないとなったら蓮くん、ガッカリするだろうな」 「バスには乗せず、直接向かう手もあるのはあるけど」 葵が何か言いたそうに俺の顔を見つめてきた。 「要は、宮尾さんだけ除け者になるから嫌なんだ」 「仕事だと割りきれば我慢も出来るけど。真生の側にいたい」 ふと葵の手が伸びてきて。 頬に触れたと思ったら、そのままーー。 「宮尾さん、ずるい‼」 唇に触れてきた葵の唇はかすかに震えていた。 「昼飯も、職員は別だし。涼太が羨ましい。今日一日、真生と蓮を独占出来るんだから」 「葵・・・」 そのまま、腰にしがみついてきた。 今日の葵は、何か、変だ。 「うちの両親が見合いして、いい加減家庭を持てって五月蝿いんだよ」 しばらく経過して葵がぽつりぽつり話し始めた。 「僕、お邪魔のようだから・・・朝ごはんと、お弁当の準備してきくるね。蓮くん起きたら教えて」 涼太に変な気を遣わせてしまった。 「ごめんな」部屋から出てくその後ろ姿に声を掛けると、大丈夫、小さく声が返ってきた。 「適当に誤魔化してきたんだけど・・・そろそろ、そういう訳にもいかなくなって。だから、正直に話した」 「まさか、俺らの事⁉」 「あぁ」 葵の表情は険しかった。 彼の両親とは、生まれたときから顔馴染みで。葵のその顔をみれば、おおよその見当はついた。 ーー何考えているんだ、お前は。今すぐ、別れろ‼ 両親揃って教師。厳格な家庭で育てられた葵。 そんな事だろう。きっと。 辛そうな眼差しを向けられ、俺まで辛くなってきた。

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