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蓮の遠足

「おじさんと、おばさん二人共、教師だったから、やはり、世間体を考えるのかな⁉」 「そうかもな。息子の幸せよりも・・・真生の両親は、俺達の事認めてくれた。涼太の両親はもうこの世にはいないから、話しも出来ないけど」 お袋の吃驚発言の日。 いずれ分かることだからと、涼太は、両親と兄の事を、葵と、俺の両親に包み隠さず総て正直に話した。 お袋、ぼろぼろと涙を流して大変だったんだ。 でも、その事があったからこそ、親父の態度も軟化したんだと思う。涼太に、お義父さん、お義母さんと呼ぶことを許してくれた。 「まぁ、考えても仕方ないが。しかし、こうして下から見るのもなかなか、いいものだ」 葵の手の甲が頬をすりすりしてきた。 「本当、ヒゲ全然ないよな。スベスベだし・・・また、一段と可愛くなったかも」 「はぁ⁉頭大丈夫か⁉」 「ダメかも。真生不足で、寝込みおそったらごめんな」 「なんだそれ」 葵は答えなかった。 鬼の居ぬ間に俺を一人占めしたかったようだ。 「ママは⁉」 蓮が目を擦りながら目を覚ました。 開口一番、俺じゃなくやっぱり涼太だ。 「具合どうだ⁉」 「う・・・ん、あたまはすこしいたいけど、えんそくいける⁉おるすばん⁉」 今にも泣き出しそうだ。 「涼太が、おいしいお弁当を作ってくれている」 「じゃあ、いけるの⁉」 葵が大きく頷くと、やったーー!!と蓮のヤツ大喜びして、布団から飛び起きた。 「でも、その前に体温計らないとな」 葵が体を起こす前に、腹の上に蓮がどさっと座ってきた。 息子は、体温計が嫌いだ。 脇の下に挟む時のあのひやっとした感触がどうも嫌らしい。 「やだ、やだ、やだ‼」 蓮は、必死で首を横に振った。 「それなら、留守番だな」 「それだけはいやだ」 「じゃあ、大人しく計るか⁉」 「う”~ん」蓮は、口を尖らせ、葵を睨み付けた。嫌なものは嫌‼目がそういってる。 葵は、分かっててわざと蓮にちょっかいを出している。 「宮尾さん、蓮くんいじめないの‼」 涼太が戻ってくる事を知ってて、わざと。 「あのさ、真生といちゃつきたいのは分かるよ。蓮くんがお邪魔なのも。だからといって、嫌いなもの引き合いに出すのもどうかと思いますけど」 「だってさぁ、真生があんまりにも可愛くて」 「それは知ってます」 涼太も口を尖らせ、むすっとしたまま、蓮を抱き上げた。 「りょうにいにママ、れん、おねつある⁉」 「おでこ触ったとき、もう熱くなかったから大丈夫」 「ほんと⁉」 「うん。でもね、もう少しだけ、お利口さん出来る⁉」 「うん‼」 涼太は、蓮を連れていった。葵は、やれやれといった感じで起きあがると、早速、キスをねだってきた。 「十回、真生の方からして」 「はぁ⁉」 「はぁ・・・じゃないだろ。色気のない声出すな」 早く、早くとせがまれ、仕方ないから、彼の唇に自分のを押し付けた。 くちゅくちゅくちゅ・・・ 五回も過ぎれば、拙さに痺れを切らした葵が、自分から口付けをしてきて、水音をたてながら思う存分口の中の感触を楽しんでいた。

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