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蓮の遠足
「宮尾さん、散々愚痴言いながら出勤していったけど、大丈夫かな⁉」
「心配しなくても大丈夫だ」
「ならいいけど」
幼稚園の遠足先は、隣町にある動物園。
蓮を中心に右が涼太。左が俺。駐車場から入り口まで手を繋いで歩いた。涼太も、蓮もご機嫌だ。
「真生、荷物重くない⁉」
「あぁ、大丈夫。涼太、運転して疲れただろう。荷物くらい俺持つよ」
「ありがとう真生」
昼食は自由で、レストランや、売店、屋台で済ませれば、こんな大荷物にならなかったのだが。好き嫌いの激しい蓮の為、涼太が一生懸命弁当を作ってくれた。
食べるか分からないけど、ちゃんと葵の分もある。
「真生、涼太、遅いぞ」
入り口で、葵がイライラしながら待っていた。
「クラスの写真撮影が終わらないと、自由行動にならないから。
みんな待っているから急げ」
「ごめん、葵」
チケットを受け取り、蓮の手を引っ張って走った。
葵は、僕は、親でも何でもないからいいよ、そう渋る涼太の腕をなかば強引に引っ張っていった。
「涼太は、ちゃんと、蓮のママしてるだろう。胸張っていけばいい」
ありがとうな葵。
「すみません」クラスの保護者に頭を下げなから、列に混ぜて貰い、あっという間に写真撮影が終了した。
「蓮くんパパ」
声を掛けられ振り返ると、映画館で会った親子が笑顔で立っていた。子供の胸の名札には、『あおきしょうま』とある。
「写真撮りますよ」
「あっ、でも・・・」
「遠慮しないで」
彼女に押しきられ、蓮を涼太が抱っこして、俺と葵で並んで何枚か撮影して貰った。
「いいなぁ、れんくんおべんとうで」
しょうま君が、母親の服の裾を引っ張った。
「息子が、蓮くんのお弁当スゴいんだよ‼って、いつも言ってて。お昼ご一緒してもいいですか⁉」
涼太に、アイコンタクトを取ると頷いてくれた。
「えぇ是非。友達と一緒なら、息子も喜びますし」
そんな会話をしているうち、蓮の回りに、クラスの子供達が自然と集まってきた。
みんな、口々に、蓮くん、一緒にご飯食べよう。そう言ってくれていた。
クラスにちゃんと馴染んでいるのか心配だったが、息子は、息子なりに、ちゃんと友達を作って、上手くやっているようで安心した。
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