33 / 150

葵の両親と、涼太の元カレ

蓮が当分動きそうもないと判断した葵が、駐車場から戻ってきてくれた。 そのまま、俺の隣にどかっと腰を下ろすと、体を傾けて寄り掛かってきた。 「重い・・・」 「今日一日分の寂しさの重みだよ」 「はぁ⁉なんだかんだといって、側にいただろうに」 「真生が俺や涼太以外に、色目使わないように見張ってたんだよ。だって、真生、可愛いから。気が気じゃなくて」 「やっぱり、一回医者に見てもらえ。頭おかしいぞ。こんな、オヤジ好き好んで誰も見ないよ」 「真生は、自覚が足りない。現に、何人か、すれ違い様に真生の事見てたし。声を大にして、僕の彼氏です‼っていいたかったけど」 涼太まで、葵の加勢に回った。 「じゅあ、分かるまでじっくりと教えてやらないとな」 「そう、夜は長いんだし」 二人とも、エロオヤジのスイッチが入ってしまった。 非常に、マズイ・・・。 「蓮くん、パパがそろそろおうちに帰りたいって」 「もうちょっとみたいなぁ・・・」 「のりまきまき作る材料買っていかないと」 涼太のその一言に、むすっとしていた蓮の表情は、パアッと笑顔の花が咲いたように明るくなった。 「れんのすきなのだ‼」 流石、涼太。 蓮に切り替えさせるのが上手い。 葵が、蓮を肩車してくれて。最初こそ、高くて怖がっていた蓮 。段々慣れてくると、葵の肩の上で黄色い歓声を上げるようになった。俺より、彼の方が父親らしいかも。 途中のスーパーで、夕飯の買い出しをして、意気揚々と家に戻ったら、駐車場に、見慣れない他県ナンバーのシルバーのセダンが駐車してあった。それを見るなり、葵の顔色が急に変わった。 「涼太、悪いけど、蓮を連れて、真生の家に行ってくれないか⁉」 「宮尾さん・・・⁉」 「真生。すまないけど、俺と一緒に来てくれないか⁉」 何となくだけど、嫌な予感がした。 「田舎に移住して、ここ一年、音沙汰なかった両親が帰ってきているみたいだ。ややこしい事に、蓮を巻き込む訳いかないから」 葵のその言葉に涼太は頷き、 「真生のうちで、ご飯作ってまってるから・・・ガンバって」 「ありがとな」 涼太と蓮が、俺んちに入るのを見届けてから、葵は、俺の手を握り締め、深呼吸して、自分の家の玄関のドアを開けた。

ともだちにシェアしよう!