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葵の両親と、涼太の元カレ
「あら、真生さん、お久し振りね」
玄関を開けると、葵の両親が仁王立ちしていてビックリした。
「おばさん、ご無沙汰しております。おじさんもお元気そうで」
こうなったからにはちゃんと挨拶をして、納得出来るまで説明をするしかない。
頭を深々と下げ、おじさんの顔に目を遣ると、ぷいっとそっぽを向かれ、不機嫌そうにドタドタと足音を鳴らし、リビングへ行ってしまった。
「取り敢えず上がったから?一応、真生さんの家でしょ」
おばさんも見るからに機嫌が悪そうだ。
靴を脱ぎ、葵に手を引っ張られたまま、俺一人だけ項垂れて、後ろに付いていった。
リビングに行くともう一人客がいた。
葵によく似た容貌と、年格好の男性。彼は、葵のいとこの、木崎樹。中学まで、一緒だった。
年を重ね、すこしふっくらしただろうか。
「何で、お前がいる‼」
「何でって・・・いとこのお前に会いに、わざわざ来てやったんだろうが」
嫌みたらしい口振りで、長くはない脚を組み、横柄な態度をとる樹。
昔は、大人しく、物静かだったのに・・・。
「そんなの嘘だろ」
「あぁ、嘘だよ。稲木真人(まさと)がここにいるって聞いて来たんだよ」
ーー稲木真人・・・
俺も、葵もその名前に聞き覚えがあった。
涼太が、『迎涼太』になる前の名前だ。
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