47 / 150
家事審判変更申立書
第一回の調停期日は、一ヶ月後に決まった。
その間、裁判所から派遣される、家庭裁判所調査員が、俺や、蓮と面会したり、家庭訪問や、幼稚園訪問をして、親権者を変更することが、蓮の福祉にかなうのか、を判断するらしい。
一週間後。
その家庭裁判所調査員が、面会を兼ねて、家庭訪問に来ることに。
葵から、秦さんという女性の弁護士さんを紹介してもらった。
涼太と同い年。真面目で、とても、仕事熱心な弁護士さんだ。
「裁判所の方も、一度、親権者を父親と決めた案件を、余程の理由がない限り、変更すべきではない、そう考えているから、家庭裁判所調査員に、ちゃんと、言うべきことを伝えた方がいいですよ。ましてや、蓮くんは、自閉スペクトラム症。環境の変化には特に敏感なので」
「はい、分かりました」
実家で、両親と、蓮と、秦さんで緊張して待っていたら、何故か、葵と談笑しながらリビングに入ってきた。
「真生、家庭裁判所調査員の、吉田さんと、久喜さん。午前中、幼稚園を訪問してくれたんだ」
だからかと、納得した。
「佐田真生です」二人に深々と頭を下げた。
俺の意向や、今までの養育状況。家庭環境、生活環境など、聞かれた事はなんでも答えた。
親父も、お袋も、懸命に俺をフォローしてくれた。
秦さんも、専門家として、親権者を変えるべきではない、そう見解を述べてくれた。俺は、この時、初めてあやかの再婚相手が、九つ年下の、二十四才だと聞かされ吃驚した。
「フリーターだけで、何の仕事をしているかハッキリしていない。家庭的にも、継子である蓮の面倒をちゃんとみてくれるか不安が残るし、経済的にも、第二子が誕生して、かなり、大変なハズ」
葵も、自分の意見を堂々と述べた。
「あやかは、蓮の側に、涼太がいることが嫌なんです。兄が殺人を犯したことは紛れもない事実です。だからといって、鼻から決め付ける事はないと思うんです。彼は、むしろ、被害者です」
俺も思いのたけを、調査員の二人に訴えた。
「そうですね、私共も、佐田さんに言う通りだと思います」
吉田さんが何度も頷いていた。
書類に記述していた久喜さんの手も止まった。
「稲木隼人事件が残した、傷痕がここにも・・・」
「で、今、彼は⁉」
聞かれたので正直に答えた。
小学校の用務員をしている事。子供たちや、花をこよなく愛している事。皆から好かれ、尊敬され、懸命に働き、生きていると。
ともだちにシェアしよう!