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家事審判変更申立書

第一回の調停期日は、一ヶ月後に決まった。 その間、裁判所から派遣される、家庭裁判所調査員が、俺や、蓮と面会したり、家庭訪問や、幼稚園訪問をして、親権者を変更することが、蓮の福祉にかなうのか、を判断するらしい。 一週間後。 その家庭裁判所調査員が、面会を兼ねて、家庭訪問に来ることに。 葵から、秦さんという女性の弁護士さんを紹介してもらった。 涼太と同い年。真面目で、とても、仕事熱心な弁護士さんだ。 「裁判所の方も、一度、親権者を父親と決めた案件を、余程の理由がない限り、変更すべきではない、そう考えているから、家庭裁判所調査員に、ちゃんと、言うべきことを伝えた方がいいですよ。ましてや、蓮くんは、自閉スペクトラム症。環境の変化には特に敏感なので」 「はい、分かりました」 実家で、両親と、蓮と、秦さんで緊張して待っていたら、何故か、葵と談笑しながらリビングに入ってきた。 「真生、家庭裁判所調査員の、吉田さんと、久喜さん。午前中、幼稚園を訪問してくれたんだ」 だからかと、納得した。 「佐田真生です」二人に深々と頭を下げた。 俺の意向や、今までの養育状況。家庭環境、生活環境など、聞かれた事はなんでも答えた。 親父も、お袋も、懸命に俺をフォローしてくれた。 秦さんも、専門家として、親権者を変えるべきではない、そう見解を述べてくれた。俺は、この時、初めてあやかの再婚相手が、九つ年下の、二十四才だと聞かされ吃驚した。 「フリーターだけで、何の仕事をしているかハッキリしていない。家庭的にも、継子である蓮の面倒をちゃんとみてくれるか不安が残るし、経済的にも、第二子が誕生して、かなり、大変なハズ」 葵も、自分の意見を堂々と述べた。 「あやかは、蓮の側に、涼太がいることが嫌なんです。兄が殺人を犯したことは紛れもない事実です。だからといって、鼻から決め付ける事はないと思うんです。彼は、むしろ、被害者です」 俺も思いのたけを、調査員の二人に訴えた。 「そうですね、私共も、佐田さんに言う通りだと思います」 吉田さんが何度も頷いていた。 書類に記述していた久喜さんの手も止まった。 「稲木隼人事件が残した、傷痕がここにも・・・」 「で、今、彼は⁉」 聞かれたので正直に答えた。 小学校の用務員をしている事。子供たちや、花をこよなく愛している事。皆から好かれ、尊敬され、懸命に働き、生きていると。

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