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家事審判変更申立書
泣きながら、二人を見送り回りをぐるりと見渡すと、葵以外全員泣いていた。
親父も、お袋も、秦さんも、あと、何故か蓮まで。
「いい話だな」
「えぇ、涼太くんの思いが報われて良かった」
「すみません、私まで、涙が移ってしまいました」
みんな、涼太の為に泣いてくれてありがとう。
で、蓮は、なんで泣いてるんだ⁉
「真生や、涼太が自分の前からいなくなるような気がしたらしいよ。蓮は、パパ、ママ大好きっ子だから」
「なるほど」
それならと、蓮を抱きしめてやったら、逆に、息子にいい子、いい子とばかりに頭を撫でられ、慰められた。
「れんが、パパとママを、わるいひとからまもるからね」
「そうだな、ありがとう、蓮」
ヤバイ。
頼もしい息子の言葉に、一度は止まったはずの涙がまた出てきた。
「本当に、素敵なご家族ですね」
秦さんが、ハンカチで目頭を押さえていた。
「蓮くんが、ずっとここにいれるよう、誠心誠意努めさせて頂きますね」
「宜しくお願いします」
いつから泣き虫になったんだ俺?
葵にはゲラゲラ笑われるし。
本当、困ったもんだ。
その日の夜ーー。
蓮が、夜中に何度も起きて、その度、
「ままは⁉れんがわるいこだから、いいこにしなかったから、れんのことおいていったの⁉」
大泣きして、同じ台詞を何度も繰り返した。
最初、母親が帰って来ないことを不思議に思っていた蓮。俺に心配を掛けまいと、涙を見せず、気丈に振る舞っていた。
ちょうど夕飯の準備をしていた時だ。俺宛に掛かってきた電話に、代わりに出てくれた。
「ママだ‼」
蓮の声が一段と弾む。まぁ、無理もない。一週間振りに聞く大好きなママの声だ。
「ねぇ、いつ、かえってくるの⁉」
無邪気な笑顔を浮かべていた息子は、次の瞬間、奈落へと突き落とされた。
『蓮っていう子は知らないわ・・・だって、もう、ママじゃないから。あなた・・・誰⁉』
切り替えが難しい特性を持つ蓮は、パニックに陥り、三日間、泣き通し、癇癪を起こしては暴れた。その間、仕事にいけず、迷惑を掛けられないと会社に辞表を出すことになった。
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