49 / 150

家事審判変更申立書

泣きながら、二人を見送り回りをぐるりと見渡すと、葵以外全員泣いていた。 親父も、お袋も、秦さんも、あと、何故か蓮まで。 「いい話だな」 「えぇ、涼太くんの思いが報われて良かった」 「すみません、私まで、涙が移ってしまいました」 みんな、涼太の為に泣いてくれてありがとう。 で、蓮は、なんで泣いてるんだ⁉ 「真生や、涼太が自分の前からいなくなるような気がしたらしいよ。蓮は、パパ、ママ大好きっ子だから」 「なるほど」 それならと、蓮を抱きしめてやったら、逆に、息子にいい子、いい子とばかりに頭を撫でられ、慰められた。 「れんが、パパとママを、わるいひとからまもるからね」 「そうだな、ありがとう、蓮」 ヤバイ。 頼もしい息子の言葉に、一度は止まったはずの涙がまた出てきた。 「本当に、素敵なご家族ですね」 秦さんが、ハンカチで目頭を押さえていた。 「蓮くんが、ずっとここにいれるよう、誠心誠意努めさせて頂きますね」 「宜しくお願いします」 いつから泣き虫になったんだ俺? 葵にはゲラゲラ笑われるし。 本当、困ったもんだ。 その日の夜ーー。 蓮が、夜中に何度も起きて、その度、 「ままは⁉れんがわるいこだから、いいこにしなかったから、れんのことおいていったの⁉」 大泣きして、同じ台詞を何度も繰り返した。 最初、母親が帰って来ないことを不思議に思っていた蓮。俺に心配を掛けまいと、涙を見せず、気丈に振る舞っていた。 ちょうど夕飯の準備をしていた時だ。俺宛に掛かってきた電話に、代わりに出てくれた。 「ママだ‼」 蓮の声が一段と弾む。まぁ、無理もない。一週間振りに聞く大好きなママの声だ。 「ねぇ、いつ、かえってくるの⁉」 無邪気な笑顔を浮かべていた息子は、次の瞬間、奈落へと突き落とされた。 『蓮っていう子は知らないわ・・・だって、もう、ママじゃないから。あなた・・・誰⁉』 切り替えが難しい特性を持つ蓮は、パニックに陥り、三日間、泣き通し、癇癪を起こしては暴れた。その間、仕事にいけず、迷惑を掛けられないと会社に辞表を出すことになった。

ともだちにシェアしよう!