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産みの母と育ての母・・・蓮が選ぶのは
明日は、いよいよ家事審判の調停の日だ。
あれこれ考えても仕方がない。
蓮と、涼太と、葵の面倒を見て、仕事して・・・。
いつも通りの俺でいくしかない。
「佐田さん、大変‼大変‼」
配達から戻り、車からパン箱を下ろしていると、血相を変え社長の奥さんが駆け込んできた。
「十分くらい前に、幼稚園から連絡があって。前の奥さんが蓮くんに会わせろって、騒いでいるみたいで・・・仕事はいいから、とにかく急いで幼稚園に‼蓮くんに何かあってからでは遅いから。急いで‼」
「あっ、は、はい」
奥さんに急かされ、急いでパン箱を片付け、更衣室に向かった。
今更、あやかに会いたいとは思わない。
でも、人様に迷惑を掛けている以上、何とかしなければ。
蓮が、母親の存在に気が付き、パニックになる前に・・・。
車に乗り込もうとしたら、聞き覚えのあるクラクションが鳴った。
「涼太・・・⁉」
音のした方を見ると、涼太が、車の窓から顔を出して、笑顔で手を振っていた。
「一緒に行こう真生」
「あぁ」
助手席に乗り込むと、すぐに車が走り出した。
「宮尾さんから電話が来たんだ。『蓮のママなら、つべこべ 言わず、真生を連れて幼稚園にすぐ来い‼』って。説明一切なしだよ」
「説明する余裕がなかったんだよ、きっと・・・。実はな、前のカミサンが、蓮に会いに来ているらしい」
涼太の顔色が変わった。
「カミサンに未練は一切ない。俺には、涼太と、葵、蓮がいればいい」
「ありがとう、真生」
不意に伸びてきた彼の手が、右手を包み込んでくれた。
不思議と落ち着くーー。
「ごめんな、仕事・・・」
「大丈夫だよ。昼休みの間、ホームセンターに行く予定になっていたから。それに、真生とこうして二人きりになれて、すごく嬉しい」
はにかんだ笑顔を見せてくれた。
涼太は、笑っていた方が断然可愛い。
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