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産みの母と育ての母・・・蓮が選ぶのは

「蓮に会わせてよ!この園長、融通がきかないのよ。母親だって、何回も言ってるのに!」 「あやか・・・自分が、蓮に言った事、覚えてるか⁉『蓮っていう子は知らない、もうママじゃない・・・あなた、誰』って・・・そういったんだぞ。どれだけ、蓮が傷付いたか。今も、忘れた頃に思い出しては、『蓮が悪い子だから?いい子にしてなかったから?』そう自分を責め続けている」 「ごめん、あまりよく覚えてないの」 表情を変えることなく、彼女は淡々と答えた。 「悪阻が酷くて、精神的に参っていたから・・・今は、大分落ち着いたけど。やっぱり、蓮がいないと寂しくて・・・彼に相談したら、引き取ってもいいって言ってくれて。この子も、男の子なのよ」 目を細め、愛おしそうにふっくらとしたお腹を擦るあやか。「一人より、お兄ちゃんがいた方がいいよね」そうお腹の子供に優しく話し掛けていた。 俺と暮らしていた頃は、化粧すら殆どしていなかった。それが今はどうだ。真っ赤な口紅、キラキラにデコった爪先のネイル、耳のピアスーー俺の知る、蓮のママだった頃の面影は微塵も残っていなかった。 再婚相手の彼は、自己紹介もしようとはしない。相変わらず携帯を弄くっている。 俺には関係ないーー。 まぁ、そんな所か。

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