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産みの母と育ての母・・・蓮が選ぶのは
幼稚園に着くと、事務の先生が昇降口で待っていてくれて、職員室の隣のミーティングルームに案内してくれた。 中に入ると既に異様な空気に包まれていた。
テーブルに差し向かいに座るのは葵と、元カミサンのあやか。
葵は、腕を組んで、険しい表情を浮かべていた。
あやかは、そんな葵を気も止める様子は一切なく、片手で携帯を操作していた。
そんな二人を見ているうち、もう一人いることに気が付いた。
窓の下にある流し台に、こっちを向いて寄り掛かかる若い長身の男。彼もまた、あやかと同じく、携帯の操作に夢中なのか、俺や、涼太が入ってきた事に気が付いていない様子だった。
「いい加減、止めたら⁉」
葵の怒声が、ミーティングルームに響き渡る。
「真生、本当に、お前の元奥さん⁉」
葵に聞かれ、頷くと、大きく溜め息をつかれた。
「久しぶり・・・」
携帯をテーブルの上に置いた彼女とふと目が合った。
「・・・」
気まずい空気が流れる。
「・・・ごめんな・・・あやかの気持ちにもう少し、寄り添うべきだった」
俺の口から出たのは、彼女を非難する言葉でなく、謝罪の言葉だった。
彼女とは色々あった。
今も、忘れた頃に、蓮の夢に出てきては、息子を苦しめているのも事実。
でも、かつて彼女と愛し合い、そして、蓮を授かったのも事実。
最初は、ほんの些細な綻びが、やがて大きくなり、互いの歯車を狂わせてしまったのだ。それに気が付いてやれなかった自分に、今更のように後悔していた。
「今頃、遅いのよ」
吐き捨てる様に言われ、葵と同じ様に、深い溜め息をつかれた。
「ちょっと‼」
「いいんだ、涼太」
身を乗り出してきた涼太を必死で止めた。
そう、悪いのは、全部、俺なんだから。
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