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産みの母に対する息子の本音

「あっ、やっぱり、ママだ~‼」 ドアが勢いよく開いて、ドタバタと蓮が駆け込んできた。 「蓮くん、今、パパたちは、大事なお話しをしてるの。お部屋に戻りましょうね」 後を追い掛けてきたみち先生が、蓮を抱き上げようとすると、スルリと逃げ涼太の後ろに隠れた。 「すみません。パパたちの姿を見付けてしまったみたいで」 みち先生は、ほとほと困っている様子だった。 「みち先生、蓮君は、私がみますから、クラスに戻って大丈夫ですよ」 見かねた葵が助け船を出してくれた。 「分かりました。あとで、迎えにきます」 「お願いします、みち先生」 背中がむず痒くなるような、蕩けるような笑顔を見せる葵。 園長先生としての作り笑顔なのは分かるが。 ヤバイ・・・。 キュンキュンする年でもないのに、何故か、ドキドキしてきた。手に汗までかいてるし。 みち先生がいなくなっても、蓮は、涼太の後ろに隠れたまま。 出てこようとはしない。 でも、やはり母親の存在が気になるのか、チラチラとあやかの顔を様子を伺うように見ていた。 よいっしょ。 小さく掛け声をあげ、あやかが椅子から立ち上がり、蓮の元に歩み寄っていった。 涼太は、本能的に後ろに腕を回し、蓮を守る為あやかの前に立ち塞がった。 ふたりのママが、蓮を巡り静かに対峙する。 俺と、葵は、事の成り行きを固唾を呑んで、ただ見守るしかなかった。 「もしかして、あなたが・・・あの人殺しの⁉」 「もう昔の事です」 「へぇーー」 涼太の事を鼻で笑い、後ろにいる蓮に話し掛けた。 気持ち悪いくらい、猫撫で声で。 「あのね、蓮。ママね、お腹の中に赤ちゃんがいるの。蓮、ずっと、弟が欲しいって言ってたよね。ママと新しいパパと、一緒に暮らさない⁉蓮、パパといてもつまんないでしょう。どうせ、ご飯も、幼稚園のお弁当もコンビニのでしょ。ママが美味しいの沢山作ってあげるから」 蓮は、涼太の服にしがみつきながら、瞬きもせず、母親をじっと見詰めていた。 「ママ、れんのこと、いらないっていった」 「そんな訳ないでしょう。ママ、蓮の事、大好きだよ」 「・・・」 蓮はしばらくの間、黙っていた。 母親を観察するように見上げ、それから、あやかの再婚相手の男性に視線を向けた。 息子と目が合った男性は、ニコリともせず、舌打ちをして、何事もなかったかのように再び携帯の画面に目を落とした。 たく!流石の葵も飽きれ果てていた。 まぁ、呆れるのも無理もないか。

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