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ママ、バイバイまたね

「彼、お酒が入らなければ、とても優しいひとなのに・・・」 あやかは、苦しい胸のうちを吐露した。 「あなたや、蓮を裏切ったバチがあたったのね・・・きっと・・・蓮、最後に、ママに抱っこさせてくれる⁉」 涙を振り払い、気丈に振る舞う彼女が、不憫でならなかった。 『真生‼』 急に、葵に強く手を引っ張られた。 彼を見上げると、口を尖らせ、むすっとしていた。 この表情は・・・間違いなく焼き餅を妬いている。 「大丈夫だ。よりを戻そうなんて、考えてないから」 『本当⁉』 頷くと、ようやく、葵に笑顔が戻った。 「れんのママは、りょうにいにママ‼」 蓮は、涼太にしがみついて、下りようとはしない。 「蓮くん、ママがおいでって」 「やぁだ‼」 ぷいっと、顔を逸らした。 頬っぺたをこれでもかと膨らませ、 「れんのママは、りょうにいにママ‼あのひとは、ちがう‼ママじゃない‼」 ぶんぶんと頭を振った。 「・・・蓮・・・」 あやかは、顔を両手で押さえ、嗚咽を漏らした。 「そうね・・・置いていった時点で、もうママじゃないものね」 足元をふらつかせながら、涼太に向かって、深々と頭を下げた。 「蓮を・・・息子を・・・宜しくお願いします・・・」

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