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第一回家事審判親権者変更調停
調停は十時から。それまでに配達を終わらせるための六時半出勤なのに・・・
イテテと腰を擦りつつ、米飯が入った保温箱を車に詰め込み、いつもより一時間早く会社を出発した。
どういう訳か、今日の調停の事、各小学校の栄養の先生と、中学校の配膳員さんに知れ渡っていて頑張ってね‼と行く先々で声を掛けて貰った。
最後の大澤小学校では、保健の先生が涼太を伴って待っていてくれた。
「迎さん、朝から何も手がつかないのか、ぼおっとしてて、・・・聞いたら、親権の調停があるそうですね」
「はい、そうです」
「どんな理由があっても、絶対、息子さん手離してはだめですよ。後悔しても遅いですから」
「有難うございます」
先生や、涼太に、「頑張って」と励まされ、俺一人で子育てをしている訳でない。涼太や、葵。そして、大勢の周りの人達に助けて貰い、今日があるという事を改めて痛感した。
「涼太、終わったら電話する」
「うん、待ってる」
涼太と笑顔で別れた。
隣で、先生が、「羨ましい‼」を連発していたが・・・。
まぁ、聞かなかった事にしておこう。
会社に戻らず、そのまま裁判所へ向かった。
スーツを着用すべきかギリギリまで悩んだ。
涼太や、葵に相談し、ありのままの姿で臨むことにした。父子家庭だって色々と大変なんだ。見栄を張っている場合じゃない。白衣を脱ぎ、Tシャツの上に、シャツを羽織った。
よし、行こう‼
蓮、パパ頑張ってくるからな。
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