83 / 150
またまた大事件勃発‼
「まぁ、俺が真生だったら、同じ事をしていたと思うし。あの携帯男、人の話しもろくに聞けないんだ。幼稚園児以下だ。涼太、今回は、目をつぶって許してやろう」
「宮尾さんが、そう言うなら、別にいいけど・・・」
涼太は、口を尖らせながら、立ち上がると、シャツを羽織り、俺の着替えを取りに行ってくれた。
葵も、すぐに服を着て、洗面所に向かい、濡れタオルを手に戻ってきてくれた。
「悪い、みんなやって貰って」
「腰が立たないんだろ⁉こうして真生の世話を焼くの、俺嫌いじゃない。いつも、涼太に先越されているから・・・たまにはいいだろ⁉」
葵が、体の隅々まで手早く、丁寧に拭いてくれた。
「あ”っ!そこはいいから‼」
さっきまで繋がっていた場所から、その前と。
これはこれで恥ずかしい。
「蓮の事、頼むな」
大急いで用意して、涼太に息子を託し、葵と共に病院へ向かった。
「蓮くんの事は任せて」って涼太。
帰るまで、機嫌が良くなっているといいんだが・・・
「一回も病院に行ってない⁉嘘だろ・・・」
葵と、急いで駆け付けた駅近くのN総合病院の救急外来で、 秦さんから聞かされた事実は悲しいものだった。
「市販の妊娠検査キットで陽性反応が出た時点で、産科を受診すれば良かったんですけど、その時は、まだ、佐田さんの奥さまだったので、隠すしかなかったようです。家を出て、吉井さんと一緒に暮らし始めて、最初は働いていたみたいですけど、最近は殆ど家にいて、携帯を弄るか、朝から夜まで酒を呑むかーーだったみたいです。些細な事ですぐにキレて、彼女に暴力を振る事もあり、彼が怖くて、言いなりになるしかなくて、身重の体で生活費を稼ぐ為、アルバイトをしていて、産科を受診する余裕がなかったみたいです」
「あやかは、彼に金を渡していたはずだ」
「生活費と、遊興費にあっという間に使い切ったみたいです」
「はぁ⁉俺が汗水垂らして稼いだ金だぞ」
頭がくらくらしてきた。
蓮の為、一円でも大事に使って欲しかったのに。
「今回の茶番劇は、蓮が月に貰える金が目当て。そういうことか⁉」
「まぁ、そうなります」
葵の言葉に秦さんは頷いていた。
彼女の心中は決して穏やかではないだろう。
弁護士として、同じ女性として、弱い立場の彼女を守りきれなかった。その、やり場のない苦しい思いを抱えて・・・。
知らなかった事とはいえ、俺も気付いてやるべきだった。
(ごめん・・・すまなかった)
ともだちにシェアしよう!