「真生‼」 むっつりとした表情で、苛立ちを露にする涼太。 「真生にとって、僕は何？」 「はぁ⁉ここで聞くか？普通」 「彼女の事ばかり見て、酷いよ」 焼きもち妬きの涼太始動だ。 困った・・・。 入院中の女性患者さんや、家族の人達がみんな、こっちをじろじろと好奇の目で見てるし・・・。 まさに針のムシロだ。 「涼太は・・・俺の・・・夫です」 恥を忍んで答えた。 「じゃあ、彼女は？」 「前のカミサンです」 「大事なのは？」 それも言わせる気か俺に‼ 「りょ・・・た・・・です」 「聞こえない‼」 どこまで俺を苛めたら気が済むのか。 「だからお前が一番大事‼愛してる‼」 ありったけの声で叫んだ。恥の上塗りだ、これじゃあ・・・。 まぁ、どうせ、ここにはもう来る予定はないし。 まぁ、いっか。 前向きに捉え、涼太を見ると、満面の笑みを浮かべていた。 周囲の人達は、固まり、ドン引きしていたが・・・。 「帰ろうか涼太」 「うん」 自分から涼太の手を握った。 他人の目を憚る事も、隠す必要もない。俺達は、心底愛し合っているんだから。 病室を出ようとしたら、あやかの声がした。 「人の事を悪く言った報いよね、きっと・・・。真生、あなたが羨ましい。こんなにも愛されて・・・」 最後の方は、涙声になっていた。 俺は振り返らなかった。元カミサンとはキッパリ決別し、蓮や、涼太や、葵と生きていくーー そう、心に誓ったから。 そして、俺や、蓮が、この後、あやかに会うことは二度となかった。