96 / 150
幸の退院と、焼きもち
「ヤダ‼ヤダ‼ヤダ‼」
「蓮、幸が待っているんだ、迎えに行ってあげないと」
「れん、あかちゃんいらない」
プイッとそっぽを向き、涼太の後ろに隠れてしまった。
「蓮‼」
「イヤだ‼」
涼太の服にしがみつき、これでもかと頬っぺたを膨らませる蓮。
「あまり、無理強いはよくない」
車にチャイルドシートを装着しに行っていた葵が戻ってきた。
「涼太、蓮と留守番を頼む」
「えぇーー‼何、それ‼」
「仕方ないだろ。蓮を一人で留守番させる訳にもいかないし」
「絶対、イヤだ‼」
「なんでお前まで、蓮と同じ事を言うんだ」
「僕だけのけ者扱いにされるのが嫌なの‼真生と幸を一人占めする気でしょう」
「涼太、お前なぁ・・・」
涼太の焼きもちに、もはやため息しかでない葵。
この状況を打破するには、どうしたらいいものか・・・。
考えた末、親父に、蓮を頼むことにした。
「電話より直接行った方が頼みやすいよ。ちょうど、お義父さんが好きな肉じゃがあるし、ついでに置いてくる」
「悪いな、涼太」
「ううん」
涼太は、蓮の手を引いて、台所に向かい、五分もしないうちに、紙袋を握り締め、蓮と戻ってきた。
「宮尾さん、くれぐれも玄関先で、真生といちゃつかないでね」
何度か釘をさし、蓮を、実家へと連れていってくれた。
ともだちにシェアしよう!