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幸の退院と、焼きもち

葵って、意外と真面目で、一人ずつ順番に挨拶をして回っていた。 「真生、さっきも聞いたけど、あれ見て、何とも思わないの?」 「いや、別に」 「僕なら、宮尾さんの首根っこを掴んで、無理矢理でも引き離すよ。真生は、優しすぎるんだよ」 「そうか?そうは思わないけど」 待ってれば、そのうち戻ってくるさ。 フギャー!フギャー! 幸がぐずり始めた。 「幸ちゃん、眠くなったの?」 涼太はゆらゆらと幸の体を揺らしあやしたが、一向に泣き止まない。 「真生が焼きもち妬かないから、幸ちゃんが代わりに、焼きもちを妬いているみたいだね」 「そうだな」 「真生、宮尾さんを連れてきてよ。幸ちゃん、ずっと泣きっぱなしになるよ」 「分かってる。分かっているけど、俺には、割り込む勇気がない。絶対睨まれる」 「真生、怒るよ」 涼太が声を荒げた。 あくまで幸の為だ‼ パパ、頑張るぞ‼ そう自分に言い聞かせて、重い足取りで葵を迎えに行った。 「帰るぞ」 割り込む隙間がなくて、彼女たちの後ろで声を掛けた。 「真生、ちょうど良いときに来た」 中から葵の声がして、手を引っ張られた。 「おい‼葵‼」 刺すような視線が痛い。 これでは睨まれても文句が言えない。 なのに、葵のヤツ、腰に腕を回してきて、自分の方に引き寄せた。 キャーーァ‼と、黄色い歓声が上がった。 「葵‼な、な・・・」 「呂律回ってないぞ、真生。最後に、仲が良いところを見たいって言われて」 「はぁ⁉幸、泣いてるのにか?」 「泣き声はちゃんと聞こえてる」 葵は、何度か会釈をすると、ようやくその場から離れることが出来た。 が、しかし、今度は、涼太が、カンカンに怒っていた。

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