103 / 150

幸の退院と、焼きもち

涼太と蓮。二人して、頬っぺたを膨らませ、ぶすくっている真っ最中。 こうして見ると、似た者親子みたいだ。 涼太は、葵に焼きもちを妬いて、蓮は、幸に焼きもちを妬いている。 「ママ、抱っこ」 しきりに涼太に抱っこをせがむ蓮。 息子が、赤ちゃん返りをするのでは、ある程度覚悟はしていたが。 「蓮くん、幸ちゃん落ちちゃうから、少し待って」 どうにかして、幸を涼太から離そうと必死だ。 「真生、見てないで助けてよ」 「あぁ、ごめん」 涼太の腕から、幸を受け取ると、今にも泣きそうな顔になった。 頼りがいが全くないけど、俺、幸のパパだよ。 一応。 なのに、なぜに、そんな悲しそうな表情を浮かべるんだ。 パパも泣くぞ。 「幸と泣き比べしている暇があったら、オムツ、濡れていないかみてやれ」 「オムツ・・・⁉」 葵に言われ、そろりと幸のお尻辺りを触ってみた。オムツはさっき交換したばかり。でも、なんか、冷たいし、匂う。 「ユルユルうんちだから仕方ないよ。おいで、幸」 オムツ交換はいつの間にか葵の担当になっていた。 嫌な顔一つせず、喜んでやってくれる。 こんだけイケメンで、それでイクメン。こんな俺に捕まりさえしなかったら、それこそ、愛妻家で、子煩悩で、家庭的な理想の父親だったのに。 「涼太。俺と、蓮と、幸でそこら辺散歩してくるから、その間、真生を一人占めしていいから、その代わり、機嫌直してくれ」 「宮尾さん、いいの⁉」 涼太の声が弾み、思わず破顔した。 「蓮、おいで」 「やぁだ。」 最初は渋っていたものの、蟻さんや、蜻蛉さんがいるか、探してこよう。そう言われ、飛び上がるように大喜びして、葵の後ろに付いていった。

ともだちにシェアしよう!