105 / 150
それぞれの家族と、雪解けのとき
すっかり機嫌が直った涼太が蓮の手を引き、葵が幸を抱っこして、実家に行くと、親父と、お袋が笑顔で出迎えてくれた。
「靴がいっぱいだけど、お客さん?」
「そうよ。みんな、あなた達に会いに来てくれたのよ」
秦さん以外に誰が来ているんだろう。
そんな事を思いながらリビングに向かうと・・・。
「はぁ!? 何で、父さんと母さんがいるんだ?」
葵がまず驚いて、
「なんで、未沙と、厚海さんまでいるの!」
次に涼太が驚いた。
「キャァーー‼、カワイイ‼」
未沙さんは、幸を見るなり駆け付けてきた。
その後を、大慌てて厚海さんが追い掛けてきた。
「走ったらダメだろ?」
「こんなの走ったうちに入らないよ。もう、心配性なんだから」
未沙さんは、初夏に妊娠が分かったものの、僅か数週間後に、流産した。
その悲しみを二人で乗り越え、つい先日、妊娠している事が判明したばかり。
涼太の話では、厚海さん、未沙さんに超が三つ付くくらい過保護になったらしい。それが、未沙さんにとって、鬱陶しいみたいだが。
「お義兄(にい)さん、幸ちゃん、抱っこしてもいいですか?」
「勿論」
未沙さんは、葵の事を、お義兄さんと呼んでいる。
俺の事は、色々な呼び方をしていたが、”まおちゃん”で落ち着いたみたいだ。
まさかこの年でちゃん付けで呼ばれるとは思いもしなかったが。
「カワイイ‼プニュプニュした頬っぺたといい、手も、ちっちゃくて・・・」
未沙さん、幸を抱っこするなり歓声を上げていた。
「ほら、あなた」
葵の母さんが、おじさんの背中をそっと押した。
「葵、父さんは決して認めた訳じゃないぞ。でも、こうして、真生くんと、迎さんと温かい家庭を築いたお前を、これからは、影なりに応援しようと思う」
「父さん・・・ありがとう」
葵、深々と頭を下げていた。
頑なに、俺達の関係を反対していたおじさん。
ようやく雪解けの兆しが見えてきた。
「良かったね葵」
「母さんもありがとう」
「それよりも、私達にも孫を抱っこさせて」
未沙さんの腕から、葵の母さん、そしておじさんへ。
最後に、秦さんの腕の中へ。
幸は、終始ご機嫌で、四人ともメロメロになっていた。
ともだちにシェアしよう!