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それぞれの家族と、雪解けのとき

すっかり機嫌が直った涼太が蓮の手を引き、葵が幸を抱っこして、実家に行くと、親父と、お袋が笑顔で出迎えてくれた。 「靴がいっぱいだけど、お客さん?」 「そうよ。みんな、あなた達に会いに来てくれたのよ」 秦さん以外に誰が来ているんだろう。 そんな事を思いながらリビングに向かうと・・・。 「はぁ!? 何で、父さんと母さんがいるんだ?」 葵がまず驚いて、 「なんで、未沙と、厚海さんまでいるの!」 次に涼太が驚いた。 「キャァーー‼、カワイイ‼」 未沙さんは、幸を見るなり駆け付けてきた。 その後を、大慌てて厚海さんが追い掛けてきた。 「走ったらダメだろ?」 「こんなの走ったうちに入らないよ。もう、心配性なんだから」 未沙さんは、初夏に妊娠が分かったものの、僅か数週間後に、流産した。 その悲しみを二人で乗り越え、つい先日、妊娠している事が判明したばかり。 涼太の話では、厚海さん、未沙さんに超が三つ付くくらい過保護になったらしい。それが、未沙さんにとって、鬱陶しいみたいだが。 「お義兄(にい)さん、幸ちゃん、抱っこしてもいいですか?」 「勿論」 未沙さんは、葵の事を、お義兄さんと呼んでいる。 俺の事は、色々な呼び方をしていたが、”まおちゃん”で落ち着いたみたいだ。 まさかこの年でちゃん付けで呼ばれるとは思いもしなかったが。 「カワイイ‼プニュプニュした頬っぺたといい、手も、ちっちゃくて・・・」 未沙さん、幸を抱っこするなり歓声を上げていた。 「ほら、あなた」 葵の母さんが、おじさんの背中をそっと押した。 「葵、父さんは決して認めた訳じゃないぞ。でも、こうして、真生くんと、迎さんと温かい家庭を築いたお前を、これからは、影なりに応援しようと思う」 「父さん・・・ありがとう」 葵、深々と頭を下げていた。 頑なに、俺達の関係を反対していたおじさん。 ようやく雪解けの兆しが見えてきた。 「良かったね葵」 「母さんもありがとう」 「それよりも、私達にも孫を抱っこさせて」 未沙さんの腕から、葵の母さん、そしておじさんへ。 最後に、秦さんの腕の中へ。 幸は、終始ご機嫌で、四人ともメロメロになっていた。

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