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これって、もしかして・・・不倫?

「蓮君のお父さん・・・ですよね!?」  土曜日の午後。  仕事帰りに立ち寄った近所のドラックストア―で、横島さんに声を掛けられた。 「大変そうですね。一つ持ちますか?」 「いえ、大丈夫です」 「遠慮しなくていいでよ」  両手にぶら下げていた幸の紙オムツを二袋と、粉ミルク缶を横島さんが代わりに持ってくれた。 「すみません」 「いいえ。蓮君は留守番ですか?」 「はい。午前中、仕事だったんで、涼太が、蓮と幸の面倒をみててくれてます」 「いいですよね、いつも仲が良くて羨ましいです」 彼の視線を感じ、ふと見上げると横島さんと目が合った。 送迎の際、立ち話を少しするだけで、彼の顔なんて別に気にも留めなかった。  改めてこうして見るとなかなかの男前だ。背も高く、肩幅も広く、女性なら誰しも頬を赤く染めて、見惚れてしまうだろう。  現に、すれ違った若い女性はみな必ず振り返って、彼を見ていた。 「このあと、少しだけお茶でもどうですか?」 「はぁ!?」  一瞬何を言われたか分らなかった。 「・・・だから・・・お茶でもどうですか?って聞いたんですよ、蓮君のお父さん・・・いえ、佐田さん」  溜息交じりに苦笑された。 「お茶!?」 「えぇ、三十分くらい付き合って頂けますか?」  彼には申し訳ないが、涼太と子供達が、俺の帰りを首を長くして待っているからと、即断った。 「まぁ、そう固い事を言わずに」 「横島さん!!」  結局、強引な彼に押し切られ、買い物を終えると、そのまま駐車場を横切り、最近オープンしたばかりのコーヒーショップへと連れて行かれた。  幸のオムツと大事な食料を人質に取られ、為す術もない。  反対側の椅子にどさっと荷物を置くと、 「注文して来るのでここいて下さい」  そう言って、カウンターに注文をしに行ってくれた。  財布を出す暇もなかった。   「カフェオレにしましたけどいいですか?」 「はい、なんでもいいです」  紙のコップを手渡され受け取ると、彼は、隣の椅子に腰を下した。 「あの、横島さん・・・」 「優です。横島優です。そう呼んで貰った方が嬉しいかな?」  不意に彼の手が伸びて来て、手を握られた。 「よ、よ・・・・」  動揺しまくりで声も上げられず。  一気に心拍数も上昇した。 心臓がバグバグといってるし。今にも飛び出してきそうだ。 「顔が真っ赤で、可愛いですね。三十六だとは思えない」 「よ、よ、横島さん‼そ、その・・・」 「ちなみに、スタッフと保護者が恋愛禁止、というルール、うちのディーサービスにはありませんので・・・」 笑顔でさらりと言われ返答に困ったのはいうまでもない。  

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