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これって、もしかして・・・不倫?

「横島さん、奇遇ですね」 「宮尾さんこそ、綺麗な女性とご一緒で羨ましい限りです」 「仕事の打ち合わせですよ、こう見えて妻一筋なので」  横島さんの腕を、手を振り解こうとしたけどビクともしない。  葵の前を、会釈しながら若い女性たちが横切って行った。  横島さんの言う通りみんな綺麗な人ばかりだ。胸がざわざわする。 「真生、俺が浮気すると思ったか?」  俺が何を考えているなんか、葵には赤子の手をひねるくらいたやすく分るんだろうな。きっと。 「ほら、帰るぞ」 「あぁ」  葵に手を引っ張れ、横島さんに手を離してくれるように頼んだ。 「何で離さないといけない」  彼は葵に対抗心を露にした。 「真生は俺の妻だ。人のモノに気安く触るな」  怒気を孕んだ低い声が辺りに響き渡った。  見ると、葵の目が凍り付いたように完全に座っていた。  葵が怒るの、久し振りに見たかも・・・。  焼きもちを妬いてくれている?  もしかして・・・。  って喜んでいる場合じゃない!! しばしの睨み合いののち、ようやく手を離してくれた。 「お前は先帰ってろ」 近付き難いオーラを放つ葵。 こうなったら、何を言っても無駄だ。 差し障りないように、買ったものを手にして、そぉーーとその場から離れた。 「パパ、ただいま」 「お帰りだろ」 家が近づくにつれ、気分はドンドン沈んでいった。 何十回ため息を吐いたことか。 涼太にどんな顔をして会えばいいか、分からない。 塞ぎ込む俺とは反対に、連は、真新しいランドセルを背負い、テンションがかなり高めだ。 「入学式、月曜日だったな」 「ママとあおにいにきてくれるって」 「そっかぁ、良かったな」 「うん‼」 蓮には内緒なんだが、就学予定の明和第二小学校の用務員、実は涼太なんだよな。 今月、一日付けで、大澤小学校から異動になった。 蓮の反応を見るのか楽しみな一方、さすが学校では、ママはまずいだろうから、違う呼び方をさせようかと思ってはいるものの、まだ決めかねている。 葵は、幼稚園の園長として来賓として呼ばれている。 だが、彼の事だ。保護者席に座り、ここぞとばかり甘えて来そうな気がする。 「真生、お帰り‼」 幸を腕に抱っこして、笑顔で涼太が顔を出した。 良かった。普段通りで・・・。 一安心吐いたのもつかの間。 涼太の焼きもち妬きのセンサーがピピピッ‼と何かを嗅ぎ付け反応した。 途端に不機嫌になる涼太。 もしかして、バレた? でも、何で⁉    

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