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蓮の入学式とあやかからの子供たちへ最後のメッセージ
「かぜさんとおはなししてた」
「そうなんだ」
「うん、ちゃんとバイバイしたから、だいじょうぶ」
蓮は、寂しそうな表情を一瞬だけ見せた。
あとで知った事だけど、ちょうどその時間に、あやかが短すぎるその生涯を閉じた。
最後に、蓮に会いに来たのかもしれない。蓮、幸を頼むね・・・風がきっと、あやかの声を届けに来てくれたのかもしれない。
「えんちょうせんせいだ!!」
小学校に着くなり、葵は、ほしみや幼稚園を卒園した新入生と、保護者に取り囲まれた。昇降口の前で葵との撮影会が始まり、アットいう間に長蛇の列に。
わざわざ早く家を出た理由はそれだった。
「蓮くん、おはようございます」
支援の先生が蓮に声を掛けてくれた。それなのに、蓮は何も答えず、俺の後ろに隠れた。
「蓮、本宮先生だよ。なんで隠れるかな。ご挨拶は?」
ぶんぶんと首を振る蓮。
何回も面談で会ったはずなのに。蓮にはほとほと困った。
「あっ!!」
「どうした蓮?」
何かを見付けたのか、校庭に向かって駆け出した。
「蓮くんそっちは危ないから」
本宮先生が慌てて追いかけようとしたが、履いているのがハイヒールで。近くにいた別の男の先生が代わりに追い掛けてくれた。
校庭は、駐車場として開放されていて、多くの車が次々に入ってきていた。
「蓮!!」
たくっ、ちょろまかと・・・
追い掛けようとしたら、さぁ~と葵がものすごいスピードで追い越していった。
足、早!!さすが、毎日、園児たちと駆けっこして鍛えているだけある。
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