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蓮の入学式とあやかからの子供たちへ最後のメッセージ
ようやく追いついた時、目をまん丸くして、作業服姿の涼太に抱っこされていた。
交通整理に駆り出されたみたいで、『横断中』と書かれた黄色の小旗を手にしていた。
「パパ、なんでママいるの?」
「蓮と同じ小学校に入ったんだよ」
「え!?そうなの」
歓声を上げる蓮。大好きな涼太と一緒だと知るや、ニコニコの笑顔になった。
「あぁ、そうだよ。ママのお仕事の邪魔になるからおいで」
「あおパパの方がいい」
「はいはい」
蓮も、幸と同じで父親の俺じゃなく、葵や涼太のほうがいいみたいで。
いまから親離れするのはかなり早くないかい?
葵が片手で蓮を抱き上げて、逃げられない様に、支援学級のクラスにそのまま連れて行った。
「ほしみゃ幼稚園の園長先生だったんですか、どうりで足が速いわけですね」
「どうもお手数をお掛けしました」
男の先生と本宮先生に頭を下げ、俺も蓮のクラスに向かった。
葵が体育館に入った途端、ざわざわし始めた。
「お前は、来賓なんだからあっちだろ」
「蓮の保護者でもある」
「頼むから大人しく来賓席に行ってくれ」
「やだね」
長い足を組んで、パイプ席に腰を下した。
それだけでも十分に絵になるから、ムカつく。
保護者の母親たちが、我先に葵の周りの椅子に腰を下した。
「蓮くんのパパさん、邪魔」
「えぇ~」
葵のモテ振りは健在で、父親たちはみんな呆れていた。
っていうか、なんで俺ら、一年三組の保護者席にいるんだ?
回りの父兄に聞いたら、このクラスの子たちに混ぜてもらい、交流学習をするようだ。
右も左も分からず、キョロキョロしていたら、校長先生が登壇し、入学式が始まった。
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