131 / 150
蓮の入学式と、あやかから子供たちへ最後のメッセージ
新一年生の名前が一組から順番に呼ばれ、蓮は、一番最後に名前を呼ばれた。
本宮先生が、つきっきりで蓮のサポートをしてくれているお陰で、ちゃんと大きい声で返事が出来て、ほっと胸を撫で下ろした。
「蓮くん、校長先生の所に来れるかな」
祝辞の最後に、何故か、息子の名前が呼ばれた。
本宮先生が蓮を促し手を繋いで登壇すると、次に、
「ご父兄の方もどうぞ」
と声が掛かり、「はい!」と返事して立つと、葵も一緒に立っていた。
「お前は、保護者じゃないだろ」
「蓮の後見人には違いない」
「はい、はい」
小声でそんな話しをしながら登壇し、蓮の両隣に立った。
「今年度、なのはな学級に入学した佐田蓮くんです。当校には今まで支援学級がありませんでした。蓮くんのご家族と面談し、今年度から支援学級を開設することにしました。蓮くんは、支援学級が出来て、初めて迎える一年生です。みなさんが簡単に出来る事が、蓮くんには難しかったり、苦手だったりします。一年生八十七人全員で、蓮くんの面倒を見てあげましょうね。蓮くんが困っているときは助けてあげましょうね」
校長先生はそこで一旦言葉を止めると、蓮に、奥に着席している6年生の方を向くよう声を掛けた。
「蓮くん、分からないときは何でも6年生のお兄さん、お姉さんに聞くんだよ。みんな、蓮くんを助けてくれるからね」
校長先生の心遣いが涙が出るくらい嬉しかった。
「ほしみや幼稚園の園長先生がいらしているので、一言お願いします」
マイクを渡された葵は、ぶっつけ本番にも関わらず、一切動じることなく堂々とした態度で来賓の挨拶のスピーチをしていた。
保護者の母親たちは、みな葵の美声と、絵になる格好良さに、溜息を吐いて、うっとりとしていた。
葵は、相変わらずモテモテだ。
俺に向けられる母親たちの視線が痛い。そんなに睨まないでくれ。頼むから。
ともだちにシェアしよう!