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男所帯に迎える可愛い紅一点、これがなかなか手強い
「あかりちゃんと一緒だよ・・・僕のお父さんと、お母さんは、お兄ちゃんばかり可愛がって、ご飯の時も、一緒に食べさせて貰えなかった。自分が作ったご飯なのに・・・みんなが食べ終わった後、残り物を妹と分け合って食べていたんだ。僕は、大きかったから我慢できたけど、妹は、お腹が空いたって、いつも泣いていたんだ。だから、どんなに貧しくても、妹や、自分の子供にはひもじい思いだけはさせない・・・蓮くんや、幸ちゃん、そして、あかりちゃんには、たくさんご飯を食べて貰いたいな」
涙を流す涼太の思いが・・・子を想う親心が、あかりちゃんに届いだのだろうか。
彼の耳元に何かを一生懸命話し掛けようとしていた。
「ん!?何!?・・・た・・・ま・・・ご・・・や・・・き?あかりちゃん、卵焼き食べたいの?」
涙を服でゴシゴシ拭きながら涼太が聞くと大きく頷いた。
「分かった。甘い卵焼き作ってあげるね」
涼太がすくっと立ち上がると、それまで、ベビーチェアで大人しくしていた幸が急に泣き出した。
「ママ、どこにも行かないよ。宮尾さん、食べてばかりいないで、幸ちゃんの面倒見てよ。あかりちゃんにも、いっぱい食べさせてあげて」
「はい、はい」
「はいは一回‼」
「おぉ、こわ~。あかり、ママにつのが生える前に、前向いて、ご飯食べようか。他に食べたいものは?」
あかりちゃん、ぶんぶんと首を振った。
恥ずかしそうに下を向いたまま、前を向くと、蓮が、
「これ、あかりちゃんの‼」
そう言って、さっきよりてんこ盛りになっている皿を差し出した。
「ママのごはん、おいしいよ」
うん、と頷いて、蓮から皿を受け取り、おそるおそる海苔巻きを一口だけ口に運んだ。
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