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第16話
「アキラが他でどんな生き方してても僕は何も言えないけど、家や学校ではちゃんと兄弟しようよ、ここはアキラの家だし、アキラは僕の兄貴だし…それは変わらないんだから」
アキラが僕の兄貴だってこと、その存在をしっかり認める。
「…コウジ」
「はい!仲直りの握手!」
そうアキラに手をさしのべるコウジ…
「……」
戸惑っているようなアキラ…
「独りより二人の方が楽しいから、絶対ね!」
そう優しく促す。
「……」
アキラはその言葉を聞いて…
短く頷いて不器用にコウジの手を握る。
自分と同じ…小さい手だけれど…柔らかくて暖かい…
「よろしくね!アキ兄!」
コウジはニコッと可愛く笑って言う。
「アキニイ?」
少し微笑んだアキラだが、その呼び名にやや顔をしかめる…
「アキラ+兄貴×(短縮)=アキ兄!いいでしょ!」
「もぅ…勝手にしろよ」
やや照れ隠しなのかツンと答えるアキラだが…
その表情は柔らかかった…
その後、初めてアキラとコウジは二匹の犬と庭で遊んだ。
犬と戯れている時のアキラは、普通に無邪気な笑顔を見せる…
いつもムスッとして無愛想な表情しか見ていなかったコウジには、それは新鮮なことだった…
病気持っていようが、言えないことを隠していようが…
目の前にいるのは、ごく普通に笑う小学六年生の姿だ…
もっと楽しいことをしてアキラを笑わせたいな…
そんなふうに思うコウジだった。
夕食の時間になり、家の中に戻る2人の兄弟。
アキラは手を洗って、用意された夕食を三階の自室へ持ってあがろうとする。
「アキ兄!」
それを止めるように、勢いよく呼ぶコウジ。
「何だよ…」
「ご飯はここで食べるものだよ」
ダイニングのテーブルを指して言うコウジに、アキラは…
「いいよ」
そっけない返事…
「ダメ、ここに置いて、こっちが僕、一緒に食べるの!」
アキラのお膳を奪い取り、テーブルに置く。
「ユカリさんは…?」
さすがにコウジの母親がいる場所では食事したくなくて聞いてしまうアキラ…
「今日は帰るの遅いから、僕ら一緒に食べるの!」
「……」
「あとお茶と…じゃ、座って!」
さっさと食卓を用意して促すコウジ。
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