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圭と陽介の初めての文化祭①

俺は今、純平とふたりで圭ちゃんの学校に来ている。 ……凄い人、人、人! そう、今日は圭ちゃんの学校の文化祭。 ライブをやるから見に来てね、なんて言われたから来たけど…… 圭ちゃんはどこにいるんだろう。俺らは周りをきょろきょろと見ながら校内を歩いた。 「凄えな! 女! 女がいっぱいいる! ほら女子! いっぱい……」 純平が不審者よろしくブツブツと呟きながらニヤケている。 まあわからないでもないかな? 男子校じゃ毎日毎日見るのは野郎ばっかだもん。 保健医の高坂にときめいていた純平を思い出して、なんだか不敏に見えてしょうがなかった。 圭ちゃんと靖史のクラスは確か「1-C」 と言ってたのを思い出し、人混みをかきわけながら教室を探す。 お昼から体育館でバンド演奏をするらしい。今まで見たことがなかったから、凄い楽しみだった。 ライブが始まるまでの間はクラスの店を手伝ってると言うから見に来たけど、何をやるのかは教えてもらえなかった。靖史に聞いてもはぐらかされるし……おおかたメイド喫茶とかコスプレ喫茶とかだろう。定番だよな……面白いけど。 際どいスリットが入ったチャイナドレスの女子集団の脇を通り抜け階段を上がり、一年生のフロアに到着する。 「1ーC」と書いてある教室に向かって歩いていると、キャッキャと騒いでいる女子の集団を見つけた。 その中心に黒い塊がチラチラ見える…… とんがった黒い耳……猫かな? 近付いていきそれが何だかわかると、俺の心臓は異常な速さで脈打った。 モコモコした黒い猫耳フード付きのトップスに、同じ素材の黒いショートパンツ。勿論ショートパンツのお尻からは長くて先に赤いリボンのついた尻尾が立ち上がっている。膝から下にかけて、モコモコした同色の足カバーみたいなのを装着して、真っ赤な顔をした圭ちゃんがそこにいた。 そのコスチュームって女の子用のセクシー系のやつじゃね? なんでしっかり着こなしてんの? めちゃくちゃ似合ってるし。 「お前らうるさい! 邪魔! 中に入れねえだろ!」 「やだぁ! 可愛い! やっぱり圭が着て正解 」 「可愛いとか言うな! こんなのすぐ脱ぐからな!」 女子に囲まれ何やら騒いでる。俺は居ても立っても居られずにその団体に割り込んだ。 「すぐ脱がなくていいよ。超ヤバイ! 圭ちゃん可愛すぎる」 女子をかきわけ、圭ちゃんの腕を掴んでいた。いきなりの部外者の登場で一瞬周りがシーンとなる。圭ちゃんは圭ちゃんで、俺の顔を見て絶句している。きっと俺に見られたくなかったんだろうな。 「……陽介、来るの早すぎねぇ?」 真っ赤な顔をして圭ちゃんが呟くと同時に、周りの女子達がまた騒ぎ始めた。 「ですよねー! 脱がなくていいよ圭! 昼まで時間あるから、それまで圭は黒ニャンコ決定ね。客寄せよろしく!」 彼女達はそう言い捨てて、圭ちゃんに看板を持たせ教室へ入ってしまった。 可愛すぎて直視できないんですけど…… 二人で赤い顔をしながらもじもじしていたら、純平が飛んできた。 「陽介、めっちゃ可愛い子ナンパしてるのかと思ったら違うじゃん! マジ圭君? ……やべぇ! 抱きつきてえ!」 わけわかんないことを叫びながら、既に両手を広げて圭ちゃんに向かってくる。 俺は慌てて圭ちゃんを自分の方へ抱き寄せ、純平を睨んだ。 「よぉ! 陽介来てたの? 久しぶりだな……ってあれ? 圭? それヤバイね! 似合いすぎ」 後ろから聞き慣れた声。振り返るとホストの衣装を着た靖史だった。髪も後ろに撫でつけ、大人っぽい。ホストそのものの雰囲気を醸し出してる靖史に呆気にとられた。 なんだこいつ。こんなにイケメンだったか? どうやら靖史も圭ちゃんのこの姿を今初めて見たらしい。 「……ほんとは俺もホストの格好するはずだったのに。陽介早く来たら驚かそうと思ったのに……なのにこんな格好」 圭ちゃんはそう言ってションボリする。そんな姿がまた可愛くて、何とも言えない気分になった。純平の言う「抱きつきたい」ってわかるわ……俺も今すぐ抱きつきたい。 「せっかく来てくれたんだけど俺、この格好で看板持って宣伝行かなきゃなんねえみたい」 看板には『1ーC コスプレ喫茶 来てね!』と書いてあった。圭ちゃんはこの看板を持って校内を一周しないといけないらしい。 ……いや、ダメだろ。こんな格好の圭ちゃん、襲われちゃうよ? 「俺も一緒に回るから。さっさと済ませよう」 圭ちゃんはコクリと頷き、二人で校内を歩き始めた。

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