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圭と陽介の初めての文化祭②
「コスプレ喫茶よろしく……」
俯き加減で圭ちゃんが看板を掲げて人混みを歩く。俺もそんな圭ちゃんの横について歩いた。
純平も一緒に行くとうるさかったけど、俺と圭ちゃんの関係を知ってるので空気を読め! 的なオーラで睨んだらどっかに行ってくれた。
……今度純平には飯でも奢ってやらなきゃな。
暫く歩いていると、だんだんと圭ちゃんの元気がなくなっていくのが気になった。俯いている顔が更に下を向いてる。
「圭ちゃん? どうした?」
ちょっと心配になり覗き込むように圭ちゃんの顔を見ると、真っ赤な顔をして口を尖らせてる。そのまま上目遣いで俺を見るもんだから、萌え死にしそうになった。
「陽介……俺、もう嫌だ。気持ち悪い……」
え? 具合悪いの? 大丈夫?
「さっきから、何度も何度も尻触られて気持悪りい……ムカつく」
……? は? なんですと?
「圭ちゃん、もう宣伝終わり! 戻ろう!」
人が多すぎて誰がいつ触って行ったかなんてわからない…… 俺が付いていながらまんまと痴漢の餌食にしてしまった。
項垂れる圭ちゃんの肩を抱くようにして、俺たちは教室に戻った。
腹立つ! 腹立つ!
教室に近付くと、同じクラスであろう気の強そうな女子がこちらに気付いて歩いてきた。
「圭! 何やってんの? 戻るの早くない?」
圭ちゃんはムッとしたまま黙ってる。きっと言いたくないんだろう。
「てかさ、そこの彼に肩抱かれちゃってどうしたの? なんか凄い萌えるんですけど……」
……萌えるとか、何なの? それどころじゃないだろ!
「あの! 圭ちゃんこの格好、可愛すぎて痴漢されまくり! あんまり酷いから途中で戻って来たよ。もう着替えさせてやって」
圭ちゃんは「何で言うんだよ!」と怒った顔をして俺を見たけど、そんなのどうでもいい。
ちょっと腹立ってるし。
「え…マジで? 圭、大丈夫?」
顔色が変わったその女子は、心配そうに圭ちゃんの顔を伺い見た。
「……陽介が守ってくれたから大丈夫」
圭ちゃんはポツリと呟くと着替えてくると言い、教室に入っていった。
気の強そうなその女子は、残された俺の顔をジッと見る。
「……何でしょう?」
俺がちょっと不機嫌に聞いたら、ハッとした顔をしてから笑顔になった。
「あなた、圭の事 圭ちゃんって呼ぶんだね。あいつ凄い怒らなかった?」
あぁ、その事か。前にそういう話を靖史がしていたっけ。
「俺は特別に許されてんの。いいでしょ」
少しふざけて言ってみた。……てか彼女、真顔になってますけど。
「まさか、圭の特別な人って君じゃないよね?」
真剣な顔つきになったと思ったら唐突にそんな事を聞かれて焦ってしまった。
特別な人って……
「……へ? 何のこと?」
とりあえず俺は返事をはぐらかした。
「それにしても圭、あれヤバかったね。あんな可愛いとは思わなかったわ。圭ってさ、凄いモテるんだよ。でも大事な人いるからってどんな告白も断ってるの」
そうなんだ。
そうだよな……圭ちゃん、モテるだろうな。よくわかる。かっこいいもん。
ちょっと胸の中がもやっとした。
「あ! 私、里佳 。自己紹介してなかったよね? よろしく」
急に握手を求められ、ちょっと驚きながら自分も陽介と名乗り握手をした。
「だからさ、最初はホストの格好してたのに調子に乗った女子達がニャンコの格好までさせちゃったってわけ。あいつさ、カッコいいけど可愛かったりもするでしょ? キャーキャー言われるのわかるよね」
あれ? まさか……
「もしかして里佳さんて、圭ちゃんの事……」
俺の言葉に里佳さんは破顔した。
「あはは。大好きだよ! あ、恋愛対象じゃなくてね、あいつの一本気なとことか真面目なとことか。可愛い顔して男らしいでしょ? そういうところ人として好きだなって思うの」
ちょっと焦ってしまった。
「いや、里佳さんもかなり男気あると思うな」
少しポカンとしてから、里佳さんはまたゲラゲラ笑った。
「陽介君、気が合いそうね。男気あるなんて初めて言われたわ……あれ? 褒めてくれてるんだよね?」
俺もそう思う……この人凄く話しやすい。
うん、男っぽいんだなきっと。
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