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告白 修斗の場合③
康介が俺とのキスで欲情してくれてるのは凄く嬉しい……俺だって康介になら抱かれてもいいって思ってる。
でも……
実は過去に俺は男と付き合った事がある──
凄く仲の良かった友達の一人。何度か二人で遊んでいたら、突然告白をされた。当時俺に恋愛感情があったかと聞かれたら、多分無かったと思う。でも真剣に俺の事が好きだと言ってくれるそいつの事は、大事な友達として大好きだったんだ。
だから、言われた通りに付き合うことにした。
付き合い始めてプラトニックに何度かデートを重ねてるうちに、俺ももしかしたらこいつの事を恋愛感情ありきで好きになれるかもしれないってそう思い始めた。居心地もいいし楽しいし……
そのうちそいつは俺を抱いてみたいなんて言い出した。
いや、俺も好きだけど……
まだそういった事には抵抗があったから、正直に無理だと伝えた。それでも何度も何度も頭を下げて俺にお願いをしてくるもんだから、渋々オッケーしたんだ。
抱きたい……って言うくらいだから、俺がヤられる方なんだろうなって思って、俺はやり方をしっかり調べた。自分に負担が大きいことくらいわかっていたから…… 俺なりに準備や覚悟をしてあいつと一緒にホテルに行った。
シャワーを浴びて、初めて男同士でキスをして…… 体を弄られているうちに、俺もその気になってきたのに……
いざ! って時になって「ごめん、やっぱ無理だ」なんて言われたんだ。
唖然だよね……
俺が決心して決めたことなんだから自分の責任なんだけどさ…… 複雑な気分だしショックだった。
あいつの方から俺を求めてきたくせに…… どうしたってそういう風に思ってしまった。
だからさ…… 正直怖いんだ。
あいつの場合は、今思うと恋愛感情なしでの事だったからダメージはこの程度だったけど、俺、康介に拒まれたら絶対に立ち直れない。
俺に抱きついてキスをしながら体を弄ってくる康介からなんとか逃れ、シャワーを浴びる。俺のことを弄りながら興奮してくれてるのは十分わかる。康介なら大丈夫だってわかってても、やっぱり恐怖心は拭えなかった。
康介は男となんて付き合った事がない筈……
俺は不安でいっぱいになりながらシャワーを済ませてバスローブを着て康介のところへ戻った。
ベッドではなく椅子に腰掛けテレビを見ている康介が俺の方を振り返る。ドキドキしながら「康介もシャワー」と言いかけると、俺の方へ歩いて来た康介に髪の毛を触られた。
少しビクッとしてしまい、クスッと笑われる。
「修斗さん、髪ビショビショ…… 風邪ひいちゃうといけないから、俺が乾かしてあげる……」
そう言って康介はまた俺を洗面所へ戻し、タオルで頭を拭きながらドライヤーで乾かしてくれた。
何だよ、優しい……
「修斗さんの髪って凄く柔らかくて触り心地いいですよね」
俺の髪を指に絡ませながら康介はニコニコしてそう話す。
鏡越しに目が合った。ジッと笑顔で俺を見てる……
「………… 」
「修斗さん?……笑って」
ドライヤーを止めた康介が俺の顔を見て呟いた。
「修斗さんごめんなさい。あんな事して引いちゃいましたよね…… 怖がらせるつもりはなかったんです」
あ…… 俺、緊張しててあれから笑えてなかったんだ。
違うよ…… 康介、そんな顔すんなよ。
「康介、違う。ごめん……引いてなんかないよ。勢いでして、康介が俺の体見てガッカリするんじゃないかって……怖いんだよ」
康介の顔を見ることができず、俯いて俺は言った。
康介が後ろから俺を抱きしめる──
「ばかだな修斗さん…… ガッカリなんてするわけがないです。今だって…… 早く修斗さんに触れたくてドキドキしてる」
大丈夫…… 康介がそう耳元で囁いてくれた。
「俺もシャワー浴びてきます。ちゃんと待っててくださいね」
そう言って康介はバスルームへ行ってしまった。
康介なら、大丈夫──
心の中でそう自分に言い聞かせる。
これまでに感じたことのない緊張でちょっと吐きそう…… 大丈夫かな? 俺。
康介が見えなくなって、改めて自分がどこで待っていたら不自然じゃないか考えてしまった。少し迷って、さっき康介が座っていた椅子に俺も腰掛け、ぼんやりとテレビを眺めて待つことにした。
しばらくテレビを見ていたけど、面白くない上に肌寒くなってしまった。
「寒……」
やっぱり寒いから、ノロノロと移動して俺はベッドの中に潜り込む。体を丸めてジッとしていると、自分の体温で布団の中がポカポカしてきて、段々と眠くなってきてしまった。
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