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初めてのクリスマス③

完璧にメイクも施し、真っ赤な口紅もかなりセクシー…… お客さんの修斗コールが物凄かった。 演奏もいつも通りの修斗さんの動きだけど、短いスカートをひらひらさせながら演奏する姿がカッコいい。 ……美人すぎる。 康介は真っ赤な顔が治まらず、ボー然と修斗さんを見ていた。見惚れているってこういう顔になるんだなってくらい、ぽかんと惚けてる…… 大丈夫? 生きてる? 修斗さんが女の人になってること以外、いつものD-ASCH の面々。でも今日はクリスマスライブという事で、みんなクリスマス仕様の衣装だった。 お揃いの黒っぽいジャケットに周さんはハット、圭さんはサンタ帽子、靖史さんはトナカイの角を頭に装着してる。 みんなかっこいい。 でも今日に限っては、どうしたって修斗さんに釘付けになってしまう。全く別人の綺麗な女の人が激しいアクションでベースを演奏してるんだ。客も修斗さんに夢中で盛り上がるのも頷ける。 演奏が終わり、修斗さんが客席の康介に向かって投げキッスをしてメンバーはステージから消えていった。 康介は最初から最後まで固まったまま。 「凄かったね…… 修斗さん、綺麗すぎて怖いくらい……」 康介を見ると、慌てた顔をして「ダメだろ!」と言いながら控室へ走って行ってしまった。 控室に行ってみると、結構な数の客が裏まで押しかけていた。康介は何か怒鳴りながら人集りをかき分けて控室に入っていく。僕もそれに続き、なんとか控室へ入ることができた。 中では圭さんが康介に説明していた。 「去年も修斗はこの格好で大盛り上がりだったんだよ。でも凄えの! 野郎の食いつきが。とりあえず周がボディガードでそのまんま打ち上げ行くからね」 クリスマスのライブの後は、対バンメンバーみんなで打ち上げが恒例らしい。 勿論僕らも同行してもいいみたいなんだけど、修斗さんはこの格好のままらしいから康介の機嫌がみるみる悪くなってしまった。 打ち上げ会場となる居酒屋まで少し歩く。バンドメンバー以外にもファンなんかもいてぞろぞろとかなりの人数だった。 康介は修斗さんが周さんの肩に抱かれ歩いてるのが気にくわないらしく、さっきからプリプリと怒っている。 「しょうがないよ…… 去年もそうだったみたいだし、周さんならファンも納得で手を出せないってことでしょ?」 僕はなんとか康介の機嫌を直そうと話しかけるけど、やっぱり納得がいかない様子でムッとしている。 「修斗さんだって着替えればいいじゃんか。みんなでエロい目で見やがって! 周さんだって、くっ付き過ぎなんだよ…… 肩抱く必要ある?」 ……確かにそれは僕も少し感じてる。ちょっとお似合い過ぎるのが気に入らない。 「そうだ! いいよもう、こっちはこっちでカップルっぽく行こうぜ」 康介はそう言って、僕の肩を抱いて歩き始めた。 まぁ、一応僕も見た目女の子の格好だし? さっきから修斗さん目当てのはずの連中からナンパされまくりなのを康介が守ってくれてる。僕が喋ったら男だってわかってくれる人もいるけど、それでも構わず馴れ馴れしくしてくるのは男でも女でもどっちでも構わないってことなのかな。ほんと迷惑この上なかった…… 周さんはライブが終わってからも修斗さんに付きっ切り。 いいよもう! 僕だって康介にエスコートしてもらうから…… 周さんと美人な修斗さんのカップルを見れば見るほど、僕もちょっとイラっとしてしまった。 半ば自棄っぱちで、康介と僕はみんなの後をついて行った。

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