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初めてのクリスマス④
打ち上げ会場となる居酒屋に到着すると、僕らは個室フロアに通された。
個室フロアの一番奥にある大部屋の座敷へ案内され室内を覗くと、長いテーブルが一列、来た順にどんどん奥から座っている。
なので先に到着していた周さんや修斗さん達は一番奥に座っていた。僕や康介は後から来たので、ほんの入り口の席に座らされる。
位置的に端と端…… 周さんが遠い。
人も多いし、密集しているから下手に席移動なんて出来ないので、僕らは諦めて知らない人達に囲まれた状態で落ち着いた。
みんなが着席したのを確認すると、圭さんともう一人、他のバンドのボーカルがその場で立ち上がり乾杯の音頭をとる。
各々グラスを上げて乾杯の声を上げ、打ち上げという名の飲み会が始まった。
僕は烏龍茶を飲んでいたのに、隣の人がしきりにお酒を勧めてくる。挙句に烏龍茶は取り上げられ、飲みやすいからと言って甘いカクテルを手渡されてしまった。
「さっきから気になってたんだけど君、もしかして男の子?」
隣の人に顔を覗き込まれてびっくりする。
「……そうですけど」
思わずつっけんどんに返事をすると、なぜかその人は喜んで僕に絡んできた。
「やっぱり! 可愛いね! あっちの修斗はさあ、美人さんで近寄り難いけど、君みたいなのは柔らかそうで僕は好きだな」
そう言いながら、僕のスカートの中に手を入れてきた。テーブルの下だから周りからは見えない。体を寄せてきて頬にキスをされそうなくらい顔も寄せてくるから僕は慌てて反対側の康介の服を引っ張った。気付いた康介が僕の肩をぐっと抱き寄せてそいつを睨んだ。
「お前、俺のに触んな!」
「……?」
あれ? 康介、酔ってる??
フラフラしながら康介は「トイレ」とひと言呟き、廊下へ出て行ってしまった。
康介大丈夫かな?
僕にちょっかいを出してきた人は申し訳なさそうに僕に謝ってくれた。
「ごめんね、彼氏も一緒だったんだね。可愛くてつい調子に乗っちゃった……」
……強引な人じゃなくてよかった。
「いいんです。でも、僕ちょっと潔癖入ってるんで、実は触られるのも苦手なんです」
嘘も方便、僕がそう言うとまた膝に触れようとしていた手をその人はサッと離した。
「そ、そうなんだね…… 彼氏なら触られても大丈夫なんだ」
「…… はぁ、まぁそんな感じです。 すみません」
苦笑いでその人と会話をしていたけど、康介が戻ってくる気配がないので心配になり僕もトイレに行くことにした。
トイレ……トイレはどこかな?
通路の奥にトイレを見つけて僕は男子トイレへ入る。そこで目に飛び込んできたのは、知らない女の子を壁に押し付け熱烈なキスをしている康介の姿だった。
えっ? ちょっと! 康介! 何やってんの?
修斗さんが見たら大変!!
…… って思って声をかけようと一歩進んだら思い出した。
違う! あの女の子、あれ修斗さんだ!
激しくパニックになりながら、僕はあわあわとトイレから飛び出し逃げるように廊下を戻った。
びっくりした……
宴会場に戻ろうと廊下を歩いていると、思いっきり誰かにぶつかってしまった。
「あ! すみませ……ん…… え? なんで?」
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