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初めてのクリスマス⑤
結構な勢いでぶつかってしまった。謝ろうと思って顔を上げると目の前にいたのが須藤さんで、僕はびっくりして謝りそびれてしまった。
「やっぱり渡瀬だ…… お前そういうのが趣味なのか?」
「……え? あっ、違…… 」
そうだった! 僕の今の格好って…… 嘘でしょ? 恥ずかしい!
「いや! 趣味じゃありません!」
須藤さんは僕をジロジロ見ながらニヤっと笑うと、ずいっと近付いてきた。そしてそのまま僕の腰に手を回す。
え……? 待って、須藤さんってこんな事するような人じゃないと思ってたのに……
「ライブの時から気になってたんだよなあ。まさか渡瀬だったとは…… でもその格好なら全然イケるな」
須藤さんの顔が近づいてくる。それと同時にブワッと匂ったお酒の匂い。この人もしかしてめちゃくちゃ酔ってる?
「あ…… 須藤さんもライブハウスにいたんですね…… ってちょっと!やだ、押さないで……」
お酒の匂いをプンプンさせて酔っ払ってるであろう須藤さんは、楽しそうに僕を押しながらズンズン進む。僕は後ろ向きで歩かされてるからまた余計に怖かった。
急に方向が変わり、空いてる個室の入り口に足を取られ須藤さんもろとも僕はひっくり返った。
何? 痛い! それと重い!
「須藤さん? どいてよ。ちょっと……え? 何? やだ待って…… え?」
僕から退いた須藤さんはひっくり返った僕の足を持ち器用に向きを変えると、その空き個室へ僕を押し込む。
「可愛いなぁ。俺別に男が好きなわけじゃねぇんだけど、こんな格好でお前みたいのなら…… ぜんぜん勃つな!」
「は? 何言ってんの?」
須藤さんは僕の上にのしかかり、僕の腕をぐっと掴んだ。
やだ…… 凄い力。全然動けない。
「須藤さん?? 酔ってるでしょ? ……やだっ、ダメですって!……やめて」
お酒の匂いをプンプンさせながら、須藤さんが僕の体を弄ってきた。
「………… 」
「………… 」
須藤さんは僕の胸の辺りをムニムニと揉む。するとスッと動きを止めた須藤さんが僕を見つめた。
「…… オッパイない」
「………… 」
当たり前でしょーーーが! バカなの?
「須藤さん? 飲み過ぎです! 僕はれっきとした男です! オッパイなんてあるわけないでしょ!」
それでも須藤さんは僕の首元でスンスンとし始めた。
「でも、いい匂い…… 」
……なにこれ、動物?
須藤さんは何故だかひたすら僕の首元の匂いをスンスンと嗅ぎまくり、どうにも退いてくれそうもない。
…… なんなの? もうやだ。
……誰か助けて。
どれくらい僕は須藤さんにスンスンされていたんだろう……
ドンっという床を踏みこむような音で人の気配を感じ、首だけ動かしその方向を見る。
そこにいたのは、真っ赤な顔をした康介だった。
「俺のに触んなーーー! 」
須藤さんが飛び上がるほどの物凄い大声で康介は叫んだ。いきなりの事で僕もビクって体が強張る。
えーー? なんなの康介!
飛び上がって驚いた須藤さんが僕から退いたので、やっと匂い嗅ぎまくり攻撃から解放された。
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