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初めてのクリスマス⑧
高台にある公園──
僕はここ、知っている。
以前僕が周さんに一緒に行きたいって言ってた場所だ。
この時期は園内はイルミネーションが綺麗なんだ。
階段を上がると目の前に色とりどりの光が飛び込んでくる。
「おぉ! なかなか綺麗だな」
綺麗な光を目の前に、周さんの頬がフワッと緩んだ。
「ねぇ、周さん! あっち、ほら! 光のトンネルになってる! 」
僕は向こうに光のトンネルを見つけ、浮き浮きして小走りで向かった。トンネル内に入ると、目の前に広がる沢山の光に見惚れてしまう。周りは静かで真っ暗なのに、ここだけ違う世界みたいだ。
ふと自分ひとりなのに気が付いて不安になった。慌てて振り返るとトンネル入口の所で周さんが僕を見ていた。
「……周さん? 」
「竜太が綺麗で見惚れた」
僕が綺麗って……
「もう、バカなこと言ってないで、早くこっち来てください…… 寒いから早くあっためて」
時間も遅かったので、公園には僕らしかいない。
だからちょっとだけ大胆になれたんだ。
照れ臭そうに周さんが僕の所まで歩いてくる。僕は手を伸ばして周さんの手を捕まえると、そのままポケットに手を入れた。
指を絡め、ポケットの中で恋人繋ぎをしながら僕は周さんにお礼を言った。
「僕の来たかった所、連れてきてくれてありがとうございます」
そう言って周さんを見ると、にっこりと微笑んで僕を抱きしめてくれた。
「お前が喜んでくれるならどこにだって連れてくよ」
周さん…… カッコよすぎ。
「あと、こっち。ほらおいで…… 」
そう言って連れてこられたのは園内の外れ。ベンチがひとつあり、展望スペースになっている。
「うわぁ! 凄い…… 」
園内のイルミネーションも凄く綺麗だったけど、ここから見降ろせる夜景が更に綺麗で驚いてしまった。
いつの間にか僕の背後に立っていた周さんが、後ろから僕を抱きしめる。周さんのコートの中に僕を抱きしめるように入れてくれたから、あったかい。
「竜太……ずっと俺の側にいてくれな」
耳元で周さんがそう囁く。
そんなの……
「言われなくてもずっと側にいますよ」
僕は首だけ周さんに振り返り、キスを強請った。
チュッと軽くキスをして、僕らはベンチに座る。
今日はね、周さんにクリスマスプレゼントを用意してるんだ。
……気に入ってくれるといいな。
「ねぇ、周さん…… ちょっと向こう向いててください」
僕がそう言っても「え〜?」と言って向いてくれない。
もう!
「ほら! お願いします。ちょっとだけでいいから…… 」
そう言って僕は周さんの頭を捕まえ、無理やり向こうを向かせた。
「いててて……なんだよ、強引だな」
笑いながらやっと周さんは向こうを向いてくれた。
隣に座る周さんの首に、バッグから取り出したマフラーをフワッとかける。
驚いた周さんが振り返ったので「僕からのクリスマスプレゼントです」そう笑顔で伝えた。
……ちょっと恥ずかしい。
周さんは僕があげたマフラーをしばらく見つめてから顔を上げ、とびっきり可愛くはにかんでくれた。
思わず嬉しくて抱きつくと、周さんに頭を撫でられる。
「超うれしい! 最高のクリスマスだ! 竜太、顔あげて…… 」
そう言われ、顔をあげるとまた周さんが僕にキスをしてくれた。
今日は外なのに、何回もキスしてくれる。周さん、まだ少し酔ってるのかな? でも喜んでもらえて僕も凄く嬉しい。
周さんがゴソゴソとポケットに手を入れる。そして無言で可愛くラッピングされた袋を僕に差し出した。
え……?
「これって?」
「俺からのクリスマスプレゼントに決まってんだろ…… 気に入らなかったら返してくれていいから……」
周さんたら。気に入らないわけないじゃん!
「凄いうれしい! 開けていいですか?」
そう言いながら、僕は返事もろくに待たずに袋を開けた。中からでてきたのはカッコいい革製の手袋だった。
「最近やたら手荒れしてんじゃん? だから手袋でもすれば少しはマシかなって思って…… 」
周さんが僕の事を思って考えてくれたプレゼント……
嬉しくて嬉しくて…… やだ、涙が出てきそうだ。
情けない顔を見られたくなくて、周さんの胸に顔を埋める。
「最高のクリスマス、周さん 大好き! ありがとう!」
ぎゅっと抱きつきお礼を言った。
── 初めてのクリスマス 終わり ──
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