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初めてのクリスマス 修斗の場合③
「なんだよ……康介のヤツ」
俺はビリビリになったタイツを脱ぎ、ゴミ箱へ捨てる。鏡で顔を確認して、ポケットから口紅を取り出し、グズグズになった化粧を簡単に直した。
それよりこの格好で生足はキツい。スースーして落ち着かねぇ。
着替えはあるとは言ったものの、その着替えの入っている鞄は宴会場だ。急いで取りに戻って、またトイレで着替えるか……
とりあえず、人前に出ても大丈夫な程度に身嗜みを整えてから俺はトイレから出た。
出た所でいきなり竜太君に出くわしてしまい少し焦った。
竜太君、一人かな?
少し赤い顔をした竜太君を見て、酔ってるのかとちょっと心配。
「竜太君、康介見なかった?」
聞いてみるけど、何故かしどろもどろになりながら、陽介さんに連れていかれたと教えてくれた。
「修斗さん大丈夫ですか? ……さっき康介がお仕置きがどうこうって言ってましたけど……」
「康介飲み過ぎなんだよ…… あいつ酔っ払って気が強くなってる……」
康介、何余計なこと言ってくれてんだよ! さっきまでの情事が頭に浮かび、顔が熱くなってしまった。動揺を誤魔化しながら竜太君に言うと、康介が酔っ払ってんのは俺のせいだと怒られた。
……だよな。それは俺もわかってるよ。
「心配かけてごめんね。竜太君にも迷惑かけなかった? あいつ…… 」
俺の言葉に竜太君の顔がみるみる赤くなる。
は? あいつ竜太君にも何かやらかしたな?
とりあえず竜太君と別れ、急いで鞄を取りに行き、トイレで着替え俺は女装を解除した。
康介の奴、どこいったんだ?
廊下をあちこち歩いて探していたら、廊下の奥の方から声が聞こえた。
声の方へ行ってみると、正座をした康介と知らない男が仁王立ちの陽介さんに怒られていた。
なんだあれ?……笑える。
酔っ払って正座してる康介は、なんか上の空でニタニタしてるし。あれ、絶対陽介さんの話聞いてねえよな?
「…… お取り込み中すみませ〜ん。陽介さん? どうしたんすか?」
陽介さんに声をかけると、康介と須藤とかいうこの男が酔っ払って竜太君に迷惑をかけていたから説教してると教えてくれた。でもそういう陽介さんも若干酔っ払ってるから、話が長そう…… さっきから同じことばっか話してる。
俺は適当に誤魔化しながら康介をその場から救出した。
少しは酔いもさめたかな?
「康介? 一緒に帰ろ?」
そう言って肩を抱いてやると、嬉しそうに小さく頷いた。
なにこの、可愛いの…… さっきの怒りマックスな康介が嘘みたいだな。
とりあえず康介の荷物を取りに宴会場に戻ると、周と抱き合って座りイチャイチャしてる竜太君の姿に驚かされる。
何あれ? 竜太君、足剥き出しじゃん……
相当酔ってるな。
面白いから写メっとこ。
「康介大丈夫? ちゃんと歩けてる?」
俺が声をかけると、康介は何かごにょごにょと喋り始める。何言ってるかわかんねえし足元も覚束なくて危なっかしい。
下を向き、にやにやしながら一人何かをごにょごにょ言ってる康介が気になって、俺は康介に歩調を合わせ隣に並んだ。
「……今夜はぁ…… 誰もいない…… 俺んちで〜、しゅーとさんにぃ…… うふふ…… サプライズ 」
「………… 」
サプライズしてくれんのね。ごめんな、聞こえちゃったよ、丸聞こえ……
てかさ? 何かサプライズを計画してんのにこんなにヘベレケじゃダメじゃん。
康介ってアホだなぁ。
でもそんな康介が可愛いんだよな。
「康介どこいくの? 康介んち行く?」
頷く康介の肩を組んで一緒に歩いた。
そして康介の家に近付く頃には、だいぶ酔いも覚めたらしくしきりに俺の事を気にしていた。
「修斗さん? 俺……飲み過ぎました。えっと…… あの…… 俺、なんかゴメンなさい! …… 色々と…… やっちまった……」
急に立ち止まって、深々と俺に頭を下げる康介が面白い。そうだよな、随分とはちゃめちゃにやらかしてくれたよな。でもいいんだ…… そんなの可愛いもんだし。
「いいよ別に。ヤキモチ妬いてくれたんでしょ? 逆に嬉しいよ…… でもトイレでチンコ突っ込まれてたら流石の俺でも怒ったかな?」
そう言うと、慌てた顔をして俺を見た。青ざめて泣きそうになっちゃった。
「どスケベの康介が、よくあそこで終われたよね。偉かったじゃん 」
「……修斗さん、怒ってる?」
もう反省したかな? もうちょい苛めたいところだけど、まぁいっか。
「怒ってねえよ…… 気持ちよかったし? ふふ…… 康介大好きだよ。だから泣かなくていいから 」
そう言って俺は康介の頭をクシャクシャにした。
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