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康介修斗のバレンタイン 2
次の日から俺は竜の家のキッチンを借りてチョコ作りの練習をさせてもらうことになった。
自分ちでやらないのかって?
だって兄貴がうるさいんだよ……
いちいち邪魔してきて、からかってくるからウザいのなんのって。
本当は圭さんにだって教えてもらいたかったのにさ、絶対ダメだって……あれ意地悪で言ってんだぜ、ムカつく!
作業は単純。
チョコを細く刻んで、湯煎しながら溶かす。
そして型に入れて固める……
そう、それだけだ。
なのになんで俺、いつも失敗するんだろう。
竜に言わせると、俺には集中力が無いんだと。
途中で飽きて他のこと考えてるでしょ? って言われた。
飽きて……?
いや、混ぜながら考えているのは修斗さんの事だよ?
俺のラブ注入って事でしょ?
そりゃ修斗さん喜んでくれっかな? って想像してたらめっちゃ笑顔の修斗さんが俺に「ありがと」って言ってさ、キスしてくれるんだよ。それからちょっとエッチになった修斗さんが…… って気づいたらなんかもう妄想爆発、いかがわしい事考えちゃって集中力切れちまうんだよ。
俺は悪くない。
竜は俺がボンヤリしてガチャガチャ混ぜてるから、チョコに水が入ってしまって分離しちゃうんだって言ってた。
あぁ、俺あまり手もと見てないからな……
「上手に作りたかったら、もっと丁寧に優しく作らないと! お家でも何度も練習しなね」
竜はちょっとめんどくさそうに俺にそうアドバイスした。
……そうだな。家でも練習して、完璧なチョコを作って修斗さんを驚かせるんだ!
うん、頑張ろう。
自分の家でも兄貴のいない隙に何度かチョコを作ってみた。
なんだかなぁ……
なんでこううまく固まらないんだ?
今日の作った分も何だか半分だけ固まった感じで完璧じゃなかった。
……あ! でも待てよ?
これ捏ねて丸めればトリュフとかいうやつみたいにならねぇかな?
「………… 」
やってみたものの、やっぱりどうにも汚らしい。
思いつきで丸めてみたものの、上手く出来ずに気持ちが滅入った。
これやっぱり買ったほうが早えよな。
無様なチョコもどきを目の前に、ぼんやりとそんな事を考えていたら母さんが帰ってきてしまった。
「あら? 康介何やってんの?……それチョコ? あはは〜、顔中チョコまみれ……ってか、何ここ?! うわっ汚っ!」
キッチンの惨状を見た母さんが、慌てて俺の所へ駆け寄ってきた。
「ちょっともう! こんなに汚して…… ちゃんと片付けなさいよ」
「あっ!」
母さんは俺の作ったチョコをガン無視して台布巾でゴシゴシ拭き始める。
「あ! 待って! それ、汚れじゃないから! ゴミじゃねーから! あぁ……だめ! 拭かないで!」
俺の作ったチョコを汚れと間違えたのか、並べてあった半分くらいを台布巾で強引に拭き取ってしまった。
いやいやいや、わかるだろ? わかんねえ? 一応トリュフだったのに……
「ひでぇよ……俺のチョコ 」
奇跡的に残ったチョコ達を、俺は素早く皿に移した。
「あ、ご……ごめんね。何? 康介、チョコ作ってたの?」
俺のチョコ……チョコだって認識されなかった。
「もしかしてさ……それ、チョコ丸めたの? トリュフにしたかったのかな?」
俺は黙って頷いた。
「それならね、これをこうして……形を整えて、ココアを振ると……ほら、綺麗になったでしょ? どう?」
は? マジか! すげぇ!
あっという間に俺の思い描いていたトリュフになった。
「ありがとう! これだよこれ!」
きちんと固まらなかったらこうやってトリュフにすりゃいいんだ!
……てかさ、こんなに失敗すんなら初めからトリュフ作ったっていいよな。
こっちの方がカッコいいし。
うん! 明日からトリュフの作り方ちゃんと調べて練習しよう。
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