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康介修斗のバレンタイン 5
バレンタイン当日──
俺は修斗さんにトリュフ作ったよ。
これ、トリュフだよな?
こないだ母さんがやってくれたようには綺麗にできなかったけど、一応トリュフらしく見える物はできたと思う。
自信ないけど、一つ味見したらちゃんとチョコだったし大丈夫。
俺は手作りしたトリュフを小さな箱に入れ、リボンをかける。なんか自分でリボンなんか付けちゃって照れ臭かった。
修斗さんへのチョコをバッグの奥へしまい込み、俺はちょっと緊張しながら学校へ行った。
学校へ着くまでの間、他校の女子の姿が目立つ。何だろうと思ったけどすぐに気がついた。
そうだよな。
この学校の誰かにチョコを渡そうとしてわざわざ来るんだ。
見てると 誰それに渡してくれ…とか頼まれてる人もいる。
あんなの頼まれちまって知らない奴だったらいい迷惑だな……
なんて思ってたら、校門のところで知らない男子生徒に声をかけられた。
「あ……あの、僕、隣のクラスの眞鍋って言うんだけど…… 」
なんとなく顔は見たことあるような気もするけど、何だろう。
「鷲尾君って、谷中先輩と仲良いよね?……これ、鷲尾君から谷中先輩に渡してもらえると嬉しいんだけど」
は?
もしかしてこれ……
「ねぇ、これもしかしてチョコ?」
聞くと恥ずかしそうに顔を赤らめてそいつは頷いた。
……ふざけんな。
「こういうのはさ、自分で渡さないと意味ねえんじゃないの? ……俺は渡せないよ。自分で頑張りなよ」
冷たいかなって思ったけどしょうがない。
こういうのはさ、人に頼むもんじゃねぇだろ。
それになんで俺がよそのヤツの恋の手伝いをしなきゃいけないんだ?
修斗さんは俺の彼氏だ!
そいつの頼みを断って、歩き出そうとしたらまた誰かに呼び止められた。
今度は何だよ?
あれ、先輩かな……
「チョコなら自分で渡してください! 俺に頼んだって無駄ですよ」
話も聞かずにそう言うと、その先輩は慌てて首を振った。
「あ、ごめんね! 違うんだよ。これ……俺から鷲尾君に。あんまり深い意味はないからさ……気にせず受け取ってよ」
真っ赤な顔をして紙袋を俺に差し出す。
深い意味はないからって……手、震えてんじゃん。
「あ、ありがとうございます」
複雑な気持ちで、一応そのチョコを俺は受け取った。
下駄箱まで歩いていると、校舎の脇に入っていく修斗さんの後ろ姿を見つけた。
あれ?修斗さん……
早足で追いかけ、修斗さんの消えていった校舎横までくると、その先で知らない男子にチョコを渡されてる修斗さんの姿が見えた。
「……… 」
なんだか見ちゃいけないものを見てしまった感じでいたたまれなくなり、俺は下駄箱の方へと引き返した。
上履きを出そうと下駄箱を開けると、中に何か紙袋が入ってる。
え? チョコ?
また誰かに渡してくれってやつかな? と思い、その紙袋をぐるっと見てみると『康介君へ』と書いてあったから俺宛だとわかった。
とりあえずそのチョコも持って教室へ向かう。
俺も好きな人にチョコ用意したけど……
なんかこんなのもらっても嬉しいのかな。
修斗さんはどれくらい貰うんだろう。
俺のチョコなんか、ショボい手作り……
なんかめちゃくちゃ不安になってしまった。
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