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康介修斗のバレンタイン 12

修斗さんは得意げにチョコの箱を俺に見せ、蓋を開けた。 「ほら! 凄くね? ……これ知ってる? 高級ブランドの限定品! 俺、並んで買ったんだよ」 知らないし……でも修斗さん、嬉しそう。 綺麗な箱にチョコが四つ上品に並んでいる。ひとつひとつ形の異なるチョコレート。デザインもお洒落で、食べるのが勿体無い感じ。 「はい 康介……あ〜んして!」 俺の目の前にちょこんと座り、修斗さんが満面の笑みを浮かべて俺の口元にそのチョコをひとつ摘んで差し出した。 ……うわ、めっちゃ照れる。 俺はドキドキしながらそのチョコを食べようと口を開けてパク付くと、そのチョコは何故か修斗さんの口の中へと消えていった。 「………… 」 「あ! ごめん! …… ねぇ、なにこれ! すげぇ美味いよ!」 食べ損ねたんですけど。てか、修斗さんに食われた…… ちょっと? 俺のためのチョコでしょ? なんで 「……俺のチョコ」 「あはは、だよね! ごめんね。俺もさ、食べてみたかったんだよ。ついつい…… 」 そんなに美味いなら俺も早く食べたい。 「はい、今度はこれ。 見て見て! 金粉入りだよ 」 また楽しそうに修斗さんが一つのチョコを摘んで俺に見せる。 次の瞬間、そのチョコも修斗さんの口の中へと消えていった。 「……? ちょっと? なんで修斗さんが食っちゃうんですか? 嘘だろ? それ俺に買ってくれたんでしょ??」 修斗さんは心底驚いた顔をして「ごめん! 思わず食べちゃった!」と言って笑った。 ……は? 無意識? え? バカなの?? 「もう! あと二個しかないじゃないですか! それ俺のために並んで買ってくれたんですよね?……もしかして自分が食べたかったから買ったの?」 俺のためじゃないのか…… 「ごめんごめんて! 俺も食べてみたかったってのもあるけど……だってさ、これ一個千円以上すんだぜ、凄いよな! 」 そんな高級チョコ……俺食ったことないよ。 「あ……でも、これも食べてみたい……」 また修斗さんはチョコを一つ摘んで、それをしげしげと眺める。 「ねえ! 俺のでしょ? ……俺に食べさせる気ないんじゃないですか?」 「そんな事ないよ……康介に喜んで貰いたくて買ったんだよ」 「俺、喜んでるように見えます??」 「……見えない」 「………… 」 ……なんだこのやり取り。てか修斗さん、チョコがすごい好きなんだな。 そこまで好きだなんて知らなかったよ。 「……じゃあさ、それ半分こしましょう? ね? 俺だって修斗さんからのチョコ食べたいもん……」 お預けくらって一個も食ってないし。 俺の提案にパァっと明るい顔で修斗さんがはにかむと、半分こするために手に持ったチョコを歯で齧った。 まさかとは思ったけど、その齧った勢いなのかまた残り半分も修斗さんの口の中へと消えていった。 マジかよ……! 俺のチョコ! もう俺もイライラ限界で修斗さんの腕を掴み、強引にキスをした。 キスというか、修斗さんの口の中に消えていったチョコを俺も味わうため、強引に唇を重ねる。散々修斗さんにチョコを焦らされていたので、俺の頭の中はもうチョコの事でいっぱい。 俺は愛を確かめ合うキスではなくて、本気でチョコを味わうためのキスをしていた。

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