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修斗の誕生日 2

放課後、周と二人でカラオケに行った。 大抵は竜太君や康介も一緒で、周と二人だけなのは久しぶりだった。 「修斗、飲みもんどうする?」 周がメニューの酒の所を開く。 「おいおい、俺ら今日は制服だから無理だぞ?」 そうだった……と口を尖らせ、周は二人分のコーラを頼んだ。 しばらく他愛ない話をしていたけど、一向に歌う気配のない周に選曲を促すと「俺はいいや……」なんて拒否された。 「なに? 歌わないの?」 誘っておきながらこんな事を言うのはなんだけど…… 正直俺もあんまり歌いたい気分じゃない。いつも俺が歌うと康介が嬉しそうにしてくれるから歌うだけで、本当はカラオケはあんまり好きじゃなかったりする…… 「いやさ、俺カラオケで歌うのって竜太が喜ぶからなんだよね。本当はあんまり好きじゃねえんだわ」 俺が思ってる事と全く同じことを言う周に笑ってしまった。 「は? なに笑ってんだよ……」 「ふふ…… 周は竜太君の事大好きなんだなぁって思ってね」 バカにされたと思ったのか、周は不満気な顔をしてコーラに口をつけた。 「………… 」 「なに? 周」 周は俺の顔を見て何か言いたそうにしている。あんまりにもじっと見ているものだから気持ちが悪くて堪らず声をかけた。 「あ……のよお。結構不思議に思ってたんだけどさ、なんでお前康介なの? 他にもっといるだろ。そもそも修斗って恋愛対象女じゃなかった?」 ……なにそれ、なんか康介に失礼じゃね? 「恋愛対象女ってさ、それ言ったら周もだろうが。俺は別に女でも男でも好きになった奴が恋愛対象だったよ」 そうは言っても…… 俺は女の子とも男とも付き合った事あるけど、なんかどれもピンとこなかったんだよな。 多分自分から好きになっていなかったから。 好きだと言われて嬉しかったから、好きになった気でいただけ……だからピンとこなかったんだと思う。 「そうなんだけどさ。康介なんかのどこがいいんだか……」 だから! ムカつくなこいつ。 「何? どんだけ康介の事嫌いなんだよ。竜太君の幼馴染だからってヤキモチ妬きすぎだろ周、ムカつくな!」 俺が怒ったら、少しだけ慌てた周が頭を下げた。 「いや悪い……違うって、俺は康介の事、嫌いじゃないよ。そうじゃなくてさ、パッと見もっと派手な奴の方がお前に似合ってんじゃねえのかな?って思って……」 「はぁ? 周バカだなぁ。それって見た目の話? 見た目なんか関係ないし。そんなの周だってわかってんだろ? それに康介カッコいいよ。お前康介の事バカにしすぎ。いい加減怒るよ?」 本気で少しイライラしてきた。 それに康介、見た目だってカッコイイじゃん! こいつは康介の良さ、ちっともわかってないんだな。 「康介はね……凄え優しいんだ。素直だしわかりやすいし。アホっぽいけどさ、俺の事に関しては凄いよくわかってくれてる。俺のダメなところとか、初めからちゃんとわかってくれてた。嬉しかったんだ、俺。……俺、康介の事好きになって本当によかった」 康介の事を思うと自然と顔が綻ぶ。 半ば独り言のように話していたら、ぽかんとしたままの周が呟いた。 「康介はアホっぽい……ってところだけ、よぉくわかるわ……」 結局この日は、周と二人で一曲も歌う事なくお喋りをして過ごした。

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