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修斗の誕生日 5
どういうこと?
今日はさ、俺の誕生日だよ?
なんで康介いねえんだよ──
昨晩午前0時を回った頃、俺の携帯は賑やかにメッセージの着信を知らせる。これは想定内。俺の誕生日を祝うおめでとうのメッセージ。この複数のメッセージの中には康介からのメッセージは無かった。
まあ、それはいいんだ。
別に一番にお祝いの言葉が無くったって。
康介の事だから今頃は爆睡してんだろう。
俺のために康介がお祝いの準備をしてくれてるのは、去年のうちからわかっていた。気づかないふりをしていたけど、一生懸命俺に内緒にしてる康介が可愛くって嬉しくて、本当に楽しみだったんだ。
それにさ、バイトが忙しいんだか知らないけど、ずっと俺のこと放ったらかしにしてんだもん……
寂しいじゃん。
でもそれも今日でおしまい!
誕生日当日の今日は康介と過ごせるはず。
俺は楽しみに学校に行って、昼休みは周と屋上に行った。
康介と竜太君が既に来ていてお昼を食べてる。
いつものように竜太君は周にくっついて仲良くお喋り。
俺の隣にいそいそと座る康介……あれ? いつもより座る位置が近い? なんてちょっとドキッとしたりして、俺は康介がどう出てくるのか期待していた。
「今日も修斗さん、放課後までちゃんといますよね?」
こそっと俺に耳打ちしてくる康介に、俺は内心「キタキタ!」と浮かれていた。デートのお誘いかな?
「ん? いるよ。今日は一緒に帰れるの?」
ワクワクする気持ちを抑え、何でもない風を装って康介の顔を覗き込みながら俺は言った。
「いや、すみません。今日もちょっと……」
「………… 」
気まずそうな顔で康介に否定された。
は? ……なんだよ、どういう事?
俺の誕生日は今日なんだけど!
ずっと放ったらかしにされた上に、もしかしたら俺の勘違いで康介は誕生日の事なんかこれっぽっちも考えてないのかもしれない……
そう思ったらちょっとムカついてしまった。
康介はそんな俺に全く気づく様子も無く、普段通りにしている。
自分から誕生日の事を話すのもどうかと思ったし、もし康介が俺の誕生日の事を知らなかったら……って思ったら俺馬鹿みたいだし、やっぱり聞く事もできずに昼休みが終わってしまった。
放課後になって康介の教室へ行ってみたら、既に早退して家に帰ったと言われた。
なんだよ……
なんで康介いねぇんだよ。
本当に今日は一緒にいられないのかな?
周も竜太君と帰っちゃったし、今日も一人かよ。
つまんねぇな……
俺はしょうがないから、一人寂しく下校する。
歩いてる途中で康介からメッセージが入った。
『いつものコーヒーショップで待ってますので来てください』
なんだよそれ。
やっぱり俺の誕生日だってわかってくれてるのかな?
ていうかさ……
俺と今日、当たり前に会えると思ってるん?
どれだけ今日のために周りの誘いを断ったと思ってんだよ……
康介が俺と会おうとしてくれてた事は凄く嬉しかったけど、今まで放ったらかしにされてたイライラもあってか俺は素直に喜べなかった。
俺は康介に返信はせずに、指定されたコーヒーショップへと向かった。
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