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高坂と志音 小旅行②

保健室から出たものの、授業中の教室に戻るわけにもいかず、俺はそのまま屋上へ向かった。 今日も学校が終わったら仕事だしさ、先生と一緒に帰れるわけじゃないしさ、夜会えなかったら学校の保健室で会うしかねぇじゃん…… 俺だってわかってるし我慢してる。でも会えないって日が何日も続くとわかったら寂しいじゃんか。 触れたいって思っちゃダメなのかよ…… なんだか先生の冷たい態度を思い出して悲しくなってしまった。 俺は不機嫌丸出しでプンプンしながら出て来ちゃったからメールだって送りにくい。 俺は屋上のベンチに横になり、目を瞑った。 (自惚れんなよ……) なんであんな事言っちゃったんだろうな。 先生の寂しそうな顔が頭を過ぎり申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 「………… 」 あとでちゃんと謝ろう。 俺はとりあえず次の授業が始まるまでの間、屋上のベンチで昼寝をした。 ふと人の気配がしたので目を開けてみると、頭上に修斗さん…… 「あ、起きた。志音君、もうすぐお昼だよ? 屋上で寝てるなんて珍しいね。こんなところで爆睡してると風邪ひいちゃうよ」 小首を傾げながら俺に話す。この人はいつも神出鬼没で驚かされる。 「保健室じゃないんだ。どうしたの? センセーと喧嘩でもしちゃった?」 喧嘩……じゃない。俺が悪いんだ。 「いや、違います」 俺がそう言った途端、屋上の入り口が開いて康介君が入ってきた。 遠目で俺と修斗さんを確認すると、ちょっと怖い顔をしながら早歩きでこちらに来る。 「なんで志音? どうしたの?」 明らかに焼きもち妬いている康介君が俺と修斗さんの間に座ろうとして腰を割り込ませてきた。 「ふふ……康介ってばわざわざ狭いところに入ってきて」 修斗さんがクスクス笑いながら康介君に場所を譲った。 ……なんかいいな。 「康介君は、素直で羨ましいや」 俺が思わず呟くと、赤い顔をして俺を見た。 「はぁ? 俺が?」 「あはは、そうそう! 康介って素直っていうかわかりやすいんだよね 」 修斗さんが真っ赤な顔の康介君を見て笑ってる。 この二人はいつだって仲良しだ。 「あ! そうだ。さっき二年の廊下で高坂先生がうろうろしてたよ。珍しいよね。志音の事探してんじゃねーの? 保健室行ってきなよ」 先生……… 「うん、俺……昼は保健室で過ごすわ。康介君ありがとう」 俺は購買でパンを買ってから保健室へ向かった。 ……また嫌な顔されちゃうかな。 昼休みで廊下も賑やか。 保健室を覗くと、数人の生徒に囲まれてお喋りをしている先生の姿が見える。 「………… 」 何となく俺は中に入る事が出来ず、結局は教室へ戻った。

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