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高坂と志音 小旅行④

「ん……?」 先生の手が俺の腰に伸びてきて緩りと尻を撫で回し始めた時、なんだか焦げ臭さに気がついた。 「陸也さん! もしかして焦げてる? 待って……!」 慌てて俺は先生から離れ、後ろの鍋を確認すると案の定…… 「鍋、火にかけたままだよ!」 先生も慌てて火を止め、レードルで中を少し回し溜息を吐いた。 「……志音が悪い」 「いや、陸也さんでしょ?」 「……… 」 「……… 」 二人で顔を見合わせて思わず吹き出す。 「まったく。大丈夫、上っ面掬えば食べられるだろ。志音の好きなビーフシチューだよ」 「食べられるとこ少なくなっちゃったね。でもありがと。お腹すいたし、食べよっか?」 俺は先生の頬にチュッとしてから皿を取り出す。 少しずつ二人で分けて、リビングのテーブルに運んだ。 先生は俺なんかより全然料理が上手だ。とくにこのビーフシチューが俺は大好き。教えてもらって俺も作るんだけど、どうも先生のとは違うんだよな。 料理上手な先生は、俺の作ったものが食べたいと言って、滅多に料理をしてくれない。 だからこうやって作ってくれるのが凄く嬉しかった。 「志音、足りるか? どこか食べ行く?」 先生はソファに座って、焦がしてしまって量が半減したビーフシチューをスプーンで突っつきながら俺に聞いた。 ……腹八分だし問題ない。 「大丈夫……それよりも陸也さんといちゃいちゃしてたい 」 俺は素直にそう言った。 「もう、なんだよ。可愛い事言ってくれるんだな。ほら、おいで…… 」 優しい顔で俺を見つめながら、腕を広げて胸を差し出す。その胸に吸い込まれるように俺は顔を埋め甘えた。 ちょっと恥ずかしいんだけど、先生にこうやってギュッと抱き竦められるのが心地よくて凄く落ち着く。先生は子どもにするように、抱きしめながら俺の頭を優しく撫でてくれるんだ。 俺は幼い頃、育ての親にもこんな風に甘えさせてはもらえなかった。 ……存在しないもの、時に金儲けの道具として扱われていたから。 先生はそれをわかっているから、こうやって甘えさせてくれる。もちろん真雪さんに救われてからも、真雪さんにはこんな風には甘えられない。 先生の前でしかこんな姿は晒せない。 「そうだ陸也さん、俺今度の土日仕事ないんだ。オフなんだけど…… 」 俺は真雪さんから連休を貰ったことを思い出し、先生に伝える。 「ああ、知ってる。俺が真雪さんにお願いしておいたんだ」 「へ? 陸也さんが?」 「そうだよ、その休みでちょっと旅行でもしてみるか?……てか、行き先は決めてあるんだけど、どう?」 「………… 」 嘘みたいだ。 旅行?? 先生と二人で? 凄く嬉しい! 「本当に? 二人で? 嘘みたい! 行きたい! 楽しみ!」 突然の素敵な提案に、俺は嬉しくて先生の首に抱きついた。

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