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俺たちの形④

 今日は先生が俺の部屋に泊まる日──  高校を卒業しモデルの仕事を本格的にスタートさせたものの、これといって今までと何も変わらない生活。先生も俺も、仕事が終わってなるべく一緒の時間が取れるようにしているつもりが、やっぱり学生の頃と違い俺が忙しくなってしまったせいで、前より会える頻度が減ってしまっていた。 「何日振りかな……」  先程「もうすぐ着くよ」と連絡が入った。とっくに通話の切れた携帯の画面を見つめながら愛しい人の笑顔を思う。お互いの部屋の鍵は持っている。それでも「出迎えてもらえるのが嬉しい」と言って、俺がいる時は必ずチャイムを鳴らす先生。今日もやっぱりピンポーンと聞き慣れた音が部屋に響いた。 「お疲れ様。おかえりなさい」  まるで亭主の帰りを出迎える妻だ……なんてチラッと考えたけど、そんなことねえなと考え直した。先生は玄関に入るなり「志音〜」と言って俺に抱きつく。 「あれ? 悠さんのところで飲んできたの?」  少しだけ香る酒の匂い。先生はよく悠さんの店に寄って食事を済ませることがある。今日もそうなのかと、なんと無しに聞いたんだけど、先生はふるふると首を振った。 「今日はね、ちょっとした飲み会でしたー。早く帰りたかったのに、飲まされましたー」  先生が酔っ払っている姿は珍しかった。元々酒にはそんなに強くないのは知っているけど、一緒にいてこんな状態になってるのなんか今まで一度だって俺は見たことがなかった。だからそんな見慣れない姿に少し戸惑う。……何かあったのかな? なんてどうしても勘ぐってしまい嫌だった。  俺に抱きついたまま顔を擦り寄せてくる先生はまるで何かの小動物みたいだ。不安になる気持ちを抑え込み、そんな先生の頭をわざとガシガシと撫でる。「なんだよやめろよ」なんて笑ってる先生に、人の気も知らないで……と俺はちょっとだけムッとした。 「大丈夫? 水……飲む?」  纏わりついてくる先生を抱えるようにしてリビングに戻る。ソファにドスンと腰掛けると、先生はそのままゴロンと横になってしまった。 「志音……志音……こっち、ねえこっち来て……」  目を瞑って今にも寝てしまいそうな先生は、甘えたような声で俺を呼ぶ。俺は急いで水を持ち、先生の前にしゃがみ込んだ。 「どうしちゃったの? こんなになっちゃって。なんか嫌なことでもあった?」 「………… 」  こんな酔っ払って、わざとらしく笑っちゃってさ、先生らしくないじゃん。  ぽやっとした顔で先生は俺の顔を見る。両手を広げ、いつもの「おいで」のポーズをするから、俺は黙ってその腕に抱かれに行った。

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