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俺たちの形⑥

 今日は竜太君たちと待ち合わせ。  卒業してから竜太君や康介君とは一度二度会っていたけど、周さんや修斗さんと会うのは随分と久し振りだ。悠さんには個人的にお世話になったと、康介君の兄陽介さんも一緒。陽介さんは卒業後は周さん達のライブで遠目から見ただけだし、そもそも俺とはあまり接点がなかったから、こういった形で会うのはなんだかちょっと変な感じだ。  そう、今日は敦が悠さんにプロポーズをする大切な日。  敦には平服で……と言われたけど、会場となるレストランやサプライズの内容を聞かされていた俺は、先生と相談して礼服に近い服装で家を出た。  プロポーズと言っても、これはもう結婚式みたいなものだったから。  前日から俺の部屋に泊まった先生と一緒に身支度をし、着替えや髪のセットを済ませてお互いの姿をチェックした。普段からかっこいい先生が今日は一段といい男になっていて、俺は隣に並ぶのが照れ臭かった。こんな気持ちは久し振りかもしれない。 「志音? どうした? ……具合悪い? 顔、赤い……」  鏡越しに先生と目が合い、心配されてしまう。そんなに顔近づけないでよ……恥ずかしいじゃん。 「ごめん、ちょっと……恥ずかしいかも。陸也さん、カッコよくてズルい」  まるで付き合いたての頃のように、ドキドキしたり顔が火照ったり。そんな風に意識してしまったら先生の顔を直視できなかった。これから結婚式……いやプロポーズを見届けるという一大イベントに参加するなんて初めてのことだから、きっと特別な感情になってしまっているのだろう。俺が緊張してどうすんだよ。 「よく言うよ! 志音にそんな風に言われたら俺、バカにされてんのかと思うよ? 俺の方が恥ずかしいわ」  ……先生は自分がどれだけいい男かわかってないんだ。  志音に負けないようにカッコよくなんねえと、なんて言いながら、少し長めの髪を後ろに撫でつけながら先生は笑った。  先生は至っていつも通り、俺はちょっと緊張しながら、他のみんなとの待ち合わせ場所まで並んで歩く。いつもなら気にならない周りの視線がなんだか落ち着かず、途中から先生に隠れるようにして歩いた。  ほんと調子狂う……  合流した竜太君達も、各々お洒落に着飾っていてとても新鮮だった。久し振りの再会に話も弾んだ。お互いの近況報告を話しつつパーティ会場に到着すると、緊張した面持ちの敦に出迎えられた。 「志音……どうしよう、緊張してきた。悠さん、ちゃんと来てくれるよな? ……怒って帰っちゃうなんてことないよな?」  いつもの太々しいくらいの敦はどこに行ったのか? そわそわと落ち着きがなくなっているのが見てわかる。敦がこんなに緊張しているのなんて初めて見た。  撮影で何度も見ている敦の正装、タキシード姿。でも今日の敦は「モデル敦」ではなく「大下敦」として、大切な人、一生添い遂げたいと思える人に意を決して告白をするんだ。いつもの自信に満ちたモデルの姿ではなく、素の表情を見せる敦がまるで別人のようで可愛く見えた。 「大丈夫だよ。それより敦、いいねそのタキシード。似合ってるよ。悠さんもそういうの着るの? ここには食事するって聞かされて来るんでしょ?……ドキドキしちゃうね」  緊張している敦をリラックスさせたかったのに、話しているうちに緊張が移ってしまって俺までドキドキしてしまった。

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