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康介の誕生日④
「康介のリクエストなかったから、俺の知ってる店にしたからね」
そうは言っても、康介も知ってんだよな。
去年の俺の誕生日に康介が予約してくれてたイタリアンの店。ここなら知り合いも働いてるし、急な予約でもなんとかしてくれるかな? なんて思ったりして……
俺が向かってる店がわかったのか、康介はちょっと嫌な顔をする。
「これから行く店って、修斗さんの友達のいる店でしょ? あの人いるんですか?」
あいつが俺の事狙ってるとか思ってるみたいで警戒してるんだ。
「ん、いるけど……大切な人との記念日デートだって言ったら奥のいい席空けてくれたよ。感謝だな」
そう言った俺の言葉に嬉しそうな顔をする康介。
本当、わかりやすいんだから……
店内に入ると、いい席だと言っていただけあって、一番奥のひと部屋しかない特別な個室に案内してもらえた。康介とも来たことあるから新鮮味はないけどそれでも嬉しそうに康介は何度も俺にお礼を言った。
「また同じところでごめんな……康介、誕生日おめでとう」
ちょっと照れ臭いけど、俺は用意していた康介へのプレゼントをテーブルの上で手渡した。
「あ……開けていいすか?」
康介がワクワクした顔で俺のことを見ている。
「いいよ。 なんでもいいなんて言うからさ……気に入らなくても怒んなよ」
「気に入らないわけないじゃないすか! 俺のために修斗さんが考えて選んでくれたってのが嬉しいんです」
そう言って、康介は不器用にビリビリと包みを破っていった。
俺のために……か。違うな。
これは康介のためというより、俺のためだ。
「おぉっ! 財布だ! かっけぇー。お洒落〜! ……これブランドのじゃね? 高そう……」
「………… 」
財布ならさ、毎日欠かさず持ち歩いてくれるだろ?
この財布を見るたび、使うたびにいつも俺を思ってくれるよな……
……とりあえず飽きるまでは側に置いといてもらえるよね?
早速使うと言って康介は新しい財布に金やらカードやら移し替えてる。
嬉しそうな康介に俺も自然と笑みが溢れた。
康介はいつまで俺の事を好きだと言ってくれるだろう。
いつまで側にいてくれるだろう。
「……大事に使ってな」
「うん、修斗さんありがとう。俺、超嬉しい」
俺たちは美味しい料理を堪能して、特別に用意してもらったケーキでお祝いをした。
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