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康介の誕生日⑤

「………… 」 目の前は真っ暗── 辺りはしんと静まり返っている。 「康介ー、なぁ……康介君ってば。もう嫌だ……これ外してよ〜」 「康介、まだぁ?」 さっきシャワーからは出てきたと思ったんだけどな。 嫌だ……こんなのおかしくなりそうだ。 康介のバカ。 今から一時間程前── 食事を終えた俺らは近くのホテルに入った。部屋に入るとすぐに康介に抱きしめられる。そのまま頭を抱かれ熱い熱いキス…… いつも以上に激しく口内を康介の舌が這い回り、それだけで俺は腰砕けになりそうだった。 康介に腰を支えられるように抱きしめられながら、俺はされるがまま。 「修斗さん、シャワー、早くシャワー浴びてきて。俺待ってますから……」 来たばっかなのにいきなりそんな事を言われた俺は、何焦ってんだろう? なんて呑気に思いながら言われる通りにシャワーを浴びにいった。 いつになく興奮気味な康介に戸惑いつつも、今日は誕生日だから特別だ、と体を綺麗にする。 「別にそんなに久しぶりってわけでもねえのにな。そんながっつくこともねえだろうに……」 それでも今日は「康介の好きなように」なんて言ってしまったからしつこそうだな……って思い、俺は念入りに体を綺麗にした。 少し緊張しながら下着姿で部屋に戻ると、ベッドの上にちょこんと座った康介が俺を見る。 「修斗さんこっち……来て」 「………… 」 もう既にエロい雰囲気になっている康介に思わず尻込みしてしまう。こういう時の康介は雰囲気が全然違うんだ。 「……早く。こっち来て」 ベッドの上に上がり、康介の前に俺も座る。 頬に手を添えられ、今度は優しくそっとキスをしてくれた。 ……ドキドキする。 「修斗さん、今日は俺の好きなパンツなんだね。これエロいから俺好き ……でもね、今日はこれ履いてね」 康介は俺の股間を手のひらでそっと撫でてから、脇に置いてあったリュックの中をゴソゴソと漁った。そして「これ履いてね」と笑顔で渡されたのは、何やらフワモコした黒い衣装。 「……なにこれ?」 広げてみると、この黒いフワフワしたものは短パンとパーカー、膝下に付けるレッグウォーマー。尻尾と猫耳まで付いている。 「黒ニャンコ!」 いや、鼻の穴膨らませて「黒ニャンコ」言われてもさ……どこからどう見ても、いかにもって感じのエロいコスプレ衣装に俺は困惑しかない。 「……どうしたの? 康介ってばこんなの買っちゃったの?」 半ば呆れ気味でそう聞くと、陽介さんの部屋で見つけたとドヤ顔で言われてしまった。 おいおい……マズいんじゃないの? サイズからしてこれは圭さんのでは?? そもそも俺、着られるのか? 「クリーニングの袋に入ってたから大丈夫です!」 ……いや、そういう問題じゃねえし。 「エロいの! これ……修斗さん似合うから絶対! はい! 早くっ! 着て! それに今日は俺の好きなようにしていいんでしょ?……ね? 修斗さん?」 期待した目でジッと見つめられ、そんな風に言われると逆らえない。 「しょうがねえな……今回だけだぞ。絶対人に言うなよな」 ……てか、圭さんこれ、めちゃくちゃ似合いそうだよな。 よからぬ想像を頭から追い出し、渋々俺は衣装を身につけた。

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