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康介の誕生日⑥
コクコクと激しく頷いてる康介に冷ややかな視線を送る。
そんな俺の視線なんか気にもとめずに、康介は俺のことをまじまじと見つめてくるから恥ずかしかった。
「……やっぱりちょっとキツイな」
ショートパンツもパーカーも、少し小さくて締め付け感が気になった。それでも何とかそれらを身に付けると、改めて康介の前に立つ。
「どう?……康介」
「……やべ。やっぱり似合う! 修斗さんこっち来て……」
呼ばれてまた康介の前に座ると、手をキュッと握られ両頬にキスをされる。
「………… 」
そしてまたリュックの中をゴソゴソ。今度は見覚えのある物を取り出した。
「はぁ? 何で康介がそれ持ってんだよ! それ竜太君のだろ?? てか俺、嫌だぞ!」
康介が取り出したのはピンクのファーの手錠……去年の文化祭のビンゴで竜太君がゲットした物だった。
「竜に借りたんです……はい、修斗さん腕、出して」
「嫌だ……」
俺が拒否すると、康介はあからさまにムッとした顔をする。
「今日は俺の言うことは '絶対' なんだろ? 修斗さん……ここには俺しかいないんだから怖くないよ? 素直に俺の言うこと聞いてよ」
……なんだよ、何のスイッチ入っちまったんだよ。
嫌だったけどやっぱり俺は逆らえなくて、しょうがないから言われた通りに両腕を後ろにまわす。ガチャリと無機質な音を立て、俺の両手首は拘束された。
「痛くないですか? 大丈夫?」
「……痛くない。けど大丈夫じゃない」
そう言った俺の言葉は華麗にスルーして、康介はまたリュックの中をゴソゴソしている。
今度は何だ? まだあるのかよ。
シュルッと音を立て取り出したのは制服のネクタイだった。
「は? ネクタイ??」
まさかとは思ったけど、ニコっと笑い康介はそのネクタイを持って俺に近づいてくる。
「おい!……ちょっ……やめろって!」
嫌な予感は敵中。康介はそのネクタイを俺の目元に巻きつけてきやがった。
「康介? やだ!……ねぇ! 取って!」
目隠しをされた俺は外そうと頭を何度も捻る。
「だめだよ。今日は俺の言うこと聞いてくれるんでしょ? そのままね……俺もシャワー浴びてくるから、このままで待ってて」
俺の太腿にチュッとキスをする康介。
視界が遮断され何もわからない中、思いもよらないところへキスをされてびっくりした俺は、思わず変な声が出てしまった。
「ふふ……修斗さん可愛い声。じゃ、そのまま待っててね」
康介に頭を撫でられ、そのまま置いてけぼりにされてしまった。
そのまま待ってって……
しょうがないから康介のいう通り、俺は手錠に目隠し状態でベッドの上で康介を待った。
そしてシャワーの音も止み、出てきたと思ったのに何の音も立たず静まり返ったままの部屋。
そして冒頭に戻る──
康介を呼んでも返事もなく、気配すらわからなくなってからどのくらい経ったのかもわからない。
真っ暗で静かな空間……
心細さと、康介を感じることができない寂しさで、俺はおかしくなりそうだった。
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