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今年のHalloweenは/高坂と志音①
去年のハロウィンを思い返す──
せっかく竜太君に誘ってもらえた周さん達のハロウィンライブだったのに、俺は仕事があったせいで少し遅れて行くことになった。おまけに他にも生徒がいるかもしれないからと言って先生は一緒に行ってくれなかった。でも俺が一人で行くのが心配だからといつのまにか悠さんに監視役を頼んでいたらしく、俺は何故か悠さんと二人でライブに行くことになっていた。心配とか言っちゃってさ、ライブハウスに行けば竜太君や康介君だっているのにどれだけ心配性なんだか……それでも心配してくれたのが嬉しかった。
今年はというと、モデル仲間とハロウィンパーティー。
俺は仕事も早く終わるし先生と会いたかったのに、敦 に強引に参加を決められてしまっていた。
敦は俺の事務所の先輩。俺がモデルをやり始めた頃からずっと面倒見てくれていて、兄貴的存在だ。
でも派手好きでチャラい……
そういうところは結構鬱陶しかったりもする。
そもそも何なんだよ、ハロウィンパーティーって。ただ仮装してどんちゃん騒ぎしたいだけだろ? 女はバカみたいな露出コスプレしてアピールしてくるのが目に見えてどうしてもイラついてしまう。
いい大人が恥ずかしい、くだらない、と思いながら敦に言われたパーティー会場に来たはずなのに、知り合いのメイクさんやら衣装さんやらにあれやこれや言われながら、まんまと俺も衣装に着替えさせられてしまった。
「………… 」
「うわっ……やっぱすげえな、なんでも着こなす! ほらこっちこいよ」
ほろ酔いの敦に手招きされる。
店の奥のソファに女の人も交じって呑んでいる敦。敦の隣に座ると、機嫌よく俺の肩に腕を回してきた。
「キャ! 志音君? やだぁ! 可愛い!」
反対側にいた香水のキツイ女が俺の腕を取り、絡めてくる。わざとなのか胸を押しつけるようにしてグイグイくるからさり気なく体を離した。
「なぁ、なんで俺が女の格好なんだよ。俺はデカイし気持ち悪いだろ。しかも敦めっちゃカッコいいし……自分だけズルくない?」
敦はヴァンパイアの衣装にフルメイク、牙までつけて血糊を滴らせている。俺はといえば、ふわふわカールのウイッグをかぶり、これはなんだ?悪魔なのかな? 変な紫色のツノをつけられて、服は膝上のフレアスカート、胸元も大きく開いて落ち着かない。胸なんて無いのだから、こんなの屈んだら乳首が見えるっての……
メイク中も鏡を見せてもらってないから自分がどんな姿なのかわからない。でもつけまつ毛までつけられたし、メイクにかなり時間もかけていたからきっと全くの別人になっているんだろうな。
先程からキャーキャーと騒いている女がくっついてくるのが気に入らない。だから来たくなかったんだ。
先生は今頃一人で飯食ってんのかな? 早く帰りたいな……
「志音、愛想なさすぎ!……リナちゃんちょっとごめんね、志音から離れて。あ、それとちょっと志音と話したいからここあけてね。ほら、志音はもっとこっちこいよ」
やっと女がどこかへ行き、俺は敦に言われるがまま体を寄せて隣に座った。
「敦は相変わらずこんなことばっかやってんの?」
さっきは敦の事をチャラいって言ったけど、本当は真面目で自分に厳しいのを俺は知ってる。派手なことが好きで、仕事が終わってからもよく一人で遊びに出かけてるのも知っている。
でもそれは、寂しいのを誤魔化すためでもあるっていう事も……だけどここ最近それが特に酷いような気がして少し心配だったんだ。
「こんなことばっかって? 俺がよく飲みに行ったり遊びに行ったりはいつものことだろ?……なに? もしかして心配してくれちゃってんの? 嬉しいなぁ」
ヘラヘラとそう言って俺の太腿に手を置く敦。スリスリと撫で回す敦の手をギュッと抓った。
「そういうことしないの! エロ敦! 本当どうかした? 嫌な事でも…… 」
「いや、嫌なことじゃなくていい事……かな?」
少し恥ずかしそうにそう言って、敦は俺から目を逸らした。
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