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今年のHalloweenは/高坂と志音④
風呂から出ようと立ち上がると、脱衣所に先生の姿があって少し驚く。
「あれ? どうしたの?……俺もう出るよ」
一緒に入るのかと思い、そう声をかけるも先生は黙って扉の向こうに立っている。
「陸也さん? なに? どうかした?」
「志音の携帯、めっちゃ鳴ってる……通知バンバン入ってるんだけど、うるせえから早く見ろ。画面には敦って出てるけど?」
敦? 今頃なんの用だろう? 仕事かな?
てか、それよりも先生の声が凄く怒っているように聞こえ慌ててしまった。
「あ、ごめんね。携帯持ってきてくれたの? ありがとう……確認するよ」
扉を開け携帯を受け取った。思った通り、先生は不機嫌丸出しな顔をしている。そういえば先生は敦のことあんまりよく思ってないんだっけ……
腰にタオルを巻いた状態で、俺は慌てて携帯の画面をタップする。先生は目の前に立ったまま、むすっとした顔で俺を見つめていた。
「………… 」
何か用事かと思ったら、さっきのパーティー会場で撮られた写真が次々に送られてきていただけだった。てかさ、纏めて送ればいいのに何で一枚ずつ送ってくんだよ。
「別に用事とかじゃないみたい。写真……あいつ嫌がらせかよ、わざわざ一枚ずつ送ってきやがって……」
そう言ったら「見せて」と言われ携帯を取られてしまった。
「………… 」
「陸也さん?」
黙ったまま俺を睨む先生がちょっと怖い。
何か怒らせるような写真、あったかな?
「なにこれ…… 」
ムッとした表情のまま先生は俺に画面を差し出す。そこに写っていたのは仮装した俺と敦がソファに並んで座って話している写真だった。
思いっきり女装の俺が笑ってる……
うわぁ、やっぱり恥ずかしい。
「あ……これ、俺着たくなかったんだけど成り行きでさ。ごめんね、変だよね」
こんなバカみたいな格好して……
だから先生は機嫌悪いんだと思い、とりあえず謝った。
「あ? 格好なんかどうでもいいんだよ……何なんだ? 敦と距離が近すぎる。なんで敦は志音の太腿に手を置いてる? なんでそれをお前は許してるんだ?」
え?
よく見ると敦が俺の肩を組み、太腿に手を置いていた。そうだ、脚摩られて俺はやめろって敦の手を抓ったっけ……
「あ、これ嫌だったからすぐに手を払ったよ。ごめんね、敦はちょっとスキンシップ過多だよね」
ちょっと嬉しい焼きもち。
でも俺のこの格好はなんとも思わないのかな。
「あとさ、これ玄関にあったんだけど……」
先生は隠すように後ろ手にあの紙袋を持っていた。
「あ! これは……」
「着て」
「え……いや、 これは……」
「着て」
「嫌……」
「……着ろ」
先生は有無を言わせず紙袋をドンと置いて、風呂上がりに着ようと用意しておいた俺のお泊まり用のスウェットと下着を持っていってしまった。
「は……? 嘘でしょ」
俺の服、てか下着……
「なあ! 下着は?」
脱衣所から顔だけ出して、リビングにいるであろう先生に大きな声で声をかける。
「履かなくていい」
冷たく言い放つその声が、結構本気で怒っているように感じて悲しくなった。
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